15. 通告 ページ37
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――「菅野A。お前の防弾少年団としての名前を与えてやる」
――「……名前？ それは、芸名ですか」
――「あぁ、そうだ。中性的な見た目で、そしてお前の舞は儚く強く、散り行く時もゆっくりと、美しさを損なわない。まるで蓮の花のようだと思った。だから……、レン。お前はこれから、防弾少年団のレン、だ」
――「……レン。確かに、男っぽくも女っぽくもない、素敵な名前です」
――「そしてレン。お前にはひとつ、言っておかなければならないことがある」
――「はい、なんでしょう」
――お前にはこれから、防弾少年団８人目の、紛れもない"男性"メンバーとして、振る舞ってもらう。
***
「紛れもない、男性メンバー……か」
Aは、宿舎の一人部屋でぼうっと窓の外を眺めていた。
夜の帳は、Aの思考をまるで迷宮に誘うかのよう。
いくら考えても埒が明かないと、分かってはいる。
けれど、押し寄せる不安がなかなか拭えずにいた。
「全部覚悟の上だ……ここに来た時から、全部……」
シヒョクは、戸惑うAの瞳の揺らぎにもまったく目を逸らさなかった。
それくらい、彼は本気だった。
スタートから躓かないためには仕方のないことだ、と。
防弾少年団が空に羽ばたくためには必要なことだ、と。
ボーイズグループに、女を求めている者はいない、と。
(最初から、分かってたことだ……)
デビュー直後に自分の正体を明かせば、もし運良く勢いに乗れたとしても、それを邪魔してしまうだろう。
ただでさえ身体が女という足枷を、メンバーや代表たちに背負わせてしまっているのだ。
だから、シヒョクからの通告を拒否することはできなかった。
ただ。
――紛れもない"男"として振る舞う、その意味が分かるか？ ……"男"になりきるんだ。
――もしそこで自分とはかけ離れた行動を取らなくてはならない時が来ても、演技を止めてはいけない。
――お前には、グループの邪魔にはならないような立ち位置が求められる。
――それを受け入れる覚悟を、持て。
(それはつまり……目立つな、ってことか)
もう、ここまで来てしまったのだ。
なら最後の最後まで、前に進み続けるしかない。
(僕に、もう引き下がる道はない)
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作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
