1. 欠点 ページ2
--
2011年。
Aが高校一年生の夏。
その日、ある人物から呼び出しを受けていたAは、校舎の屋上で一人空を見つめて待っていた。
「お待たせ、A」
現れたのは、長い黒髪を靡かせる少女。
名前は清華という。
「大分馴染んできたね。その格好も」
ブレザーのスカートが風でめくれないように手で抑える清華から、Aはそっと視線を外す。
「……それ。気遣いのつもりか、照れてるのか、どっち？」
「もちろん、気遣いだよ」
清華が顔を除き込みながら問いかけると、Aは柔らかい微笑みを崩さずにそう答えた。
Aのこの微笑みは、ひそかに巷で“天使の微笑み”と名付けられ、Aの代名詞とされている。
泣く子も、芸能界事務所も記者も黙る、気の読めない微笑み。
Aはいつもそうやって心の内を隠しているのだと、清華は知っていた。
「……照れてる、くせに」
清華はそう呟いて、ぷいと顔を背ける。
そして静かに、バレないように、視線だけそっとAへ向けた。
――ほんとうに、男みたい。
清華は思う。
Aの顔立ちは綺麗で無駄がない。
睫毛で綺麗に縁取られた、大きすぎず小さくもない瞳。深い色を宿した眼球は、まるで中から天使と悪魔が誘っているかのように人を惹き付ける。
くっきりと浮かぶ顎のラインや細い鼻筋は、大人びた女性のような、儚い少年のような色気を放つ。
形の言い唇はいつも緩やかな弧を描く。
白く透明な肌は、化粧をしないAのすべてを引き立てている。
(この見た目で、身長は169cm。ダンスの天才で、友達は男ばかりで、ノリもいい。優しくて、レディーファーストで、賢い……そして)
「……男子用のブレザー着てる」
ありえない。
この世のどこを探しても、A以外にこんな人間はいない。
Aは、生物学上はれっきとした女性だ。
けれどAの心には少年か、あるいは青年が住んでいる。
その心が、Aの最大の魅力であり、最大の“欠点”だった。
「Aは流石だよ。
そんななのに、たった３ヶ月でクラスの男子に受け入れられて、友達もできて」
「そうでもないよ。あいつらも、まだどう付き合えばいいか分からないって感じだし」
「女の子のファンクラブまで出来たんだよ？」
「え……？」
Aが目を丸めた。
その頬に若干の赤みが差したことに、清華はムっとする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
