ハートBEAT

10BEAT ページ11

うちのバンドメンバーは少なからず才能というものを持ち合わせていると、個人的には思っている。
　とはいえこれは紛れもなく俺の持論であり、実際のところは定かではない。

　一方の俺はといえば、才能と言えるようなものを持ち合わせていない。
何か取柄があるとすれば、実家がそれなりに裕福なことと、実の姉があの三峰Aであることくらいであろうか。
　いや、周りの人間からすればそれは大分羨ましい事なのだろう。しかし俺自身はそのことは決して誇れることだと思って居らず、最早後ろめたさすら抱いていた。
　今は昔ほど自分の生まれた環境について何か思っていないが、今も尚、ほんの少しばかりではあるが、実の姉に対して良くない感情を抱いている。

　幼い頃、俺は姉の周りをいつも付いて回った。
　別にいじめの標的にされることはなかったし、俺自身も目立っている方の子供だったこともあり不自由などなかった。
　勉強をさせても、スポーツをさせても、芸術に触れさせても姉はいつも一番で、俺は二番。
　等の昔に気が付いていた。あの人がいる限り、他の誰も決して一番にはなれないのだと。俺が一番になることはないのだ、と。
　気が付いていながら、それに対して何か思うことは辞めてしまった。
　恨めしさがないといえば当然嘘になる。それでも、姉を嫌いたくはなかった。
　紛れもなく自慢の姉で、こうなりたいと願う姿だったからだ。
　これ程までに完璧な人は居ないであろうと、常に姉を自慢したい気持ちで溢れていた。俺が誰かに自慢せずとも、姉の凄さは勝手にしれ渡っていくのだが。

　昔から、姉は何でもできる人だった。
　人付き合いも上手かったが、嫌なことははっきりと嫌だといったし、一種の同調意識的なもので行われるいじめのような事も姉はしなかった。
　したくなかっただとか道徳的にどうだとか、そんなことは関係なく、興味がなかったのだ。そうすることに価値を見出だせないから、興味がない。
　変だなんだと言われることもあったが、俺は一度たりとも姉を恥じだと思ったことはない。

　何でもできて常に自分の信念に基づいて行動し、弟思いのお姉ちゃん。

　それが、俺にとっての姉だった。

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