【殺戮の天使】前世持ちオタクの興奮

六十九話　演技 ページ34

結局持っていく荷物は、

・ハンカチ
・ティッシュ
・上着
・救急セット
・タオル
・袋
・メモ帳
・ボールペン

となった。

メモ帳とボールペンは、ザックと意思疎通を図るため。


そう、ザックも行くのだ。


いや、ついてくんなよ。
下手に会話すれば変な目で見られるのは私なんだからな。

そう言いたいのはやまやまなのだが、
ザックも弟の成長した姿が見たいだろうし……。

今回は特別に許可しようと思う。

ただし、あまり話しかけないと約束させた。


「まぁ、お前が心配ってのもあるがな」

「え、心配してくれるの、優し」


表面は普段の様子を装うが、内心ザックらしからぬ発言に驚く。
いつも冷たく辛辣なあの男に、一体何が……！？

体内を駆け巡った衝撃は次の言葉で跡形もなく消える。


「ああ、お前がキャラと会話して頭ぶっ壊れないか心配だ」


なるほど馬鹿にされているのか。
しかし私は怒ることなく、ドヤ顔で親指を立てた。


「その辺は大丈夫、もう何回か会話したから」

「は、おま、マジかよ」

「おうともよ」


そのまま流れでダニーやレイの話をする。
それを前のめりになりながら羨ましそうに聞くザック。

やはり彼も、腐っても殺天ファン。

実際のキャラを見てみたいという気持ちもあるのだろう。


「よくまともに会話できたな」

「ほんとそれ、もっと褒めろ」

「おーすごいすごい」

「子供扱いすんなや」

「どっちだよ」


私の頭に伸ばしたザックの手をはたき落とす。
私の合計年齢知ってるか、フィフティーンだぞ。


「でも、この先発狂しないという自信はない」

「だろうな」


「俺だってそうだし」と、珍しく共感してくれる。
その時ザックが初めて同じ人間だと思えた。


「だから、演技をすることにするよ」


両手にこぶしを作り、そう宣言した。
演技に自信があるわけではないが、
役になりきることで本心を出にくくするのだ。

精密な設定や考え方を練る必要がありそうだが、
性格はもう決めていある。


「目指せ、クールなお姉さんポジ！」

「無理だろ」

「諦めるの早くないですか」

「だって無理だろ」


やけにはっきり言い切るので、さすがに少し刺さった。
でも、本音を出すわけにはいかない。


「貴君にはもちろんのこと、手伝ってもらうからな」

「うわ、最悪」

「とか言いながら結局付き合ってくれるところ私は好きよ」

「お前の好きほど軽い言葉はない」

「よく知ってるな」

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