【殺戮の天使】前世持ちオタクの興奮

六十話　再会 ページ24

「おお、おおお！」


まばゆかった光がさらに強くなり、眼も開けられなくなる。
部屋全体が明るく照らされ、窓からも光が漏れた。

これは興奮する。

魔法感強い。

ただただ感嘆の声を上げ、光が弱まるのを待った。


「インプット完了」


リーファのその声で光は消えた。

それでも、まだ目は開けなかった。

何が起こったのだろう。
目を開ければどんな驚きが待っているのだろう。

これだけ凄そうな術だったのだ。
きっと何かしらあるのだろう。

ワクワクと、高鳴る胸を押さえつけるように深呼吸する。

ゆっくりと目を開けた。



リーファの足元の魔法陣らしきものが、消えていた。

ただ、それだけ。


「…………えぇー」


いつもと何の変わりもない部屋。
リーファの姿も、いつも通り。
私にも変化は見られない。

今のはなんだったんだ。

何も変わってないじゃないか。

あれだけ期待させておいて、何もないなんてあんまりだ。

ジト目でリーファを見ると、指をさされた。
正確には、私の後ろを指している。何かあるのだろうか。

志村後ろ、というフレーズを思い出した。


「神からのサプライズです」


その言葉に戸惑いつつも、その指示に従っておずおずと振り向いた。
これで何もなかったら怒る。

と思っていたが、それはなかった。


私の背後には、私より頭一つ分大きい男が立っていた。


「――っ」


リーファの時とは違い、不法侵入？ なんて思わなかった。


だって、私はこの人を知っているから。

目つきの悪い顔も、それを覆う包帯も、
ノアに似て柔らかそうな黒髪も。

エナドの時にノアと再会した時と、少し似た感覚がする。


でも、わからない。


「なんで、いるの」


驚きすぎて、声がうまく出せない。
見開きすぎて目が落ちそうだ。

これは、想像以上のサプライズだった。


「だって、貴方は、とっくに転生して、日本で平和に暮らしてるはず。
もう、死んだはず。それも、もっと幼いときに」


それなのに。


「まるで、本編みたいな、姿になって……」


私が言えたのはそこまでだった。

鼻の奥がツンとして、視界がにじみ始めて。
もう、何も考えることができなかった。

なんで、とか、そんなのどうでもよかった。


「ザック……っ！」


前触れもなくその胴体に思い切り抱き着く。
そして顔をうずめた。

ああ、ザックだ。本物だ。
小さい頃から変わらない、この匂い。
本当に、ザックだ。


たとえこれが夢だったとしても、私は今世界一幸せだ。

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