小指、出して (ページ5)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:66,109 hit

#04 ページ5

side R.Y

「大ちゃん、おはよ。」

「ん、おはよー。」

楽屋に入ると、寝てる伊野尾ちゃんを膝枕してふわふわと髪を撫でている大ちゃんがいた。

それはもう、こっちが恥ずかしくなるくらいの愛おしそうな、でも少し切なそうな瞳で大ちゃんが伊野尾ちゃんを眺めてるから、大ちゃんがきちんと伊野尾ちゃんとの『約束』を果たしたのかと思って、

「約束、ちゃんと守ったんだ？」

つい、思わず、そう言ってしまっていた。

「約束……？」

途端に、怪訝そうな視線をこちらに向ける大ちゃん。

そうだ、忘れてた。
伊野尾ちゃんと大ちゃんだけの『約束』で、口外しちゃいけないんだった。

「いのちゃんが、山田に言ったの？自分から？」

「そ、そうそう！伊野尾ちゃんが大ちゃんに膝枕してもらうって約束したって言ってたからさ。あれ、してなかったの？」

「……した覚え、ないけど。」

咄嗟についた嘘は、10年間も一緒にいる大ちゃんにはばれたかもしれない。

「……なんで、いのちゃん、」

だってほら、
大ちゃんはさっきよりも不安そうな顔で、伊野尾ちゃんの頬をさらりと撫でた。