秋桜（by.ROOMS）6 (ページ3)

今日:13 hit、昨日:8 hit、合計:72,843 hit

28.3 ページ3

「サトシさん、何か調べていたんですか？」

会話の糸口を探していた私は、ちょうどよくパソコンでネットをしていたサトシさんに話しかけてみる。

「ん？パン屋さん～」

ふんわりと笑って、語尾に音符マークでもつきそうな調子で言うサトシさん。

「あっ、もしかしてっ」

昨日、電車の中で話したことを思い出して嬉しくなる。

サトシさんは、んふふ、と笑ったまま、その、長くて綺麗な人差し指を口元に持ってきた。

まだ秘密、って、ことかな？

ふわぁっ、と心がくすぐったくなるような温かさに包まれて、
私も、んふふ、と笑う。

「サトシくん、パン食べたいの？
何パン？どこか気になるパン屋でもあった？」

今からでも、サトシさんのために、パンを買いに走り出しそうな勢いで櫻井さんが言う。

「んー、違うよ。大丈夫。
今は見ているだけ」

サトシさんが櫻井さんの椅子を引いて、座るように促す。
それから、立ちっぱなしだった私たちにも
『座って？』とジェスチャーしてくれる。

ぺこりと頭を下げた後、相葉さんと隣合わせに座った。
松本さんは、そっと台所の方へ移動する。

「松本くん、家、行ってきたの？」

流し台で手を洗い始めた松本さんに櫻井さんが訊く。

「うん。ちょうど母さんがいて、捕まっていた。
今度、みんなを連れてこいってさ」

「松潤母？会いたい。
どんなんだろうねっ」

「どんな、って。俺そっくりだよ？」

想像の中で松本さんそっくりな女性を思い描く。
……女優並みに美人、決定！

「あ、みんな、コーヒーでいい？」

「「「はーい」」」

さっきカフェでコーヒーを飲んだばかりの松本さんが、当然のように、みんなのためにコーヒーを淹れ始める。
本当に気遣いの細やかな人だ、と感心してしまう。

「Aさんは？どうする？
紅茶とかジュースもあるけど……」

「私も、コーヒーをお願いします」

「フフッ、かしこまりました」

松本さんが、コーヒー豆を挽く音が聴こえてきて、思わず二度見する。
豆………から、ですか。

「何？」

「い、いいえ。何でもないです」

コーヒー頼んで良かった！
みんなが口を揃えて返事をした理由がわかる気がした。

コポコポとドリップされるコーヒーの音が聴こえてきて、
辺りに香ばしくも優しい匂いが漂い始める。