GRAY 1 〜Light gray〜

意識的に詰める距離／S ページ35

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side S


「なんかあの2人、楽しそうだねーっ」


列車内が帰宅中の学生で混雑してきた。


俺と松本くんと相葉くんは、
智くんとニノから少し離れた車両の真ん中付近を陣取って、並ぶ。


右に相葉くん
左に松本くん
2人に挟まれるような形でつり革を握りながら、
智くんとニノを見ている。


智くんとニノは、
何故か互いを突きあいながら笑っていて。
小競り合っているようにも
………いちゃついているようにも見える。


楽しそう
うん、楽しそう。
相葉くんに目配せして、同意の意思を伝える。


考えてみると、
これくらいの距離で智くんの笑顔を見たことはあまりない気がする。


智くんはいつも 笑みを浮かべてはいても
楽しそうと言うのとは少し違って見えたし。
智くんが笑っているときは、
俺は隣からそれを見ているのがほとんどだから。


この距離で
客観的に
智くんの笑う顔を見るのは新鮮な気がした。


「最初は反対していたんだけど、
来て良かったよね」


松本くんがそう言って、
見守るようにニノを見る。


ニノと会ったのは昨日が初めてなわけなんだけど
こんな柔らかい表情で想ってくれる友人が、
ニノのすぐ傍にいつもいてくれることが分かって、なんだかすごくホッとした。


智くんもニノも、
その力のせいで
孤独を選びがちなのは、
きっと同じだから。


「翔ちゃんは、
おーちゃんとどういう知り合いなのー？
差し当たりなければ、教えて」


ニコニコと人好きする笑顔を浮かべて、
元気全開って感じに相葉くんが訊いてくる。


『翔ちゃん』『おーちゃん』に『満面の笑み』


相葉くんの雰囲気からすると、
元から天真爛漫なところはあるのかもしれないけど


真っ直ぐに向けられている瞳と、
笑ったまま止められた口角を見てとると、
彼が『頑張って』俺との距離を詰めてくれているんだと分かる。


自分の好意を惜しげも無く伝えてくれる相葉くんに、笑顔を返す。


「相葉クン。
『差し当たり』じゃなくて『差し支え』ね」


「えっ？あっ、そっか！！
日本語って、時々、難しいよねっ？」


「ククク、相葉クンにとっては、ね」


「あ、なんだよ、松潤。ひどいんだから。
ねー、翔ちゃん」


「え？……あはは。
2人とも仲良しだね」


「仲良しって、翔さん。
小学生じゃないんだから」


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