転生吸血鬼はありふれられない (ページ8)

今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:2,382 hit

ありふれた出会いページ8

「なんだお前ここでサボってたのか。」

扉が開き、その声が聞こえた途端に男は血色を変えた。
ぴんと立っていた耳は急にへにょりと折れ曲がる。

どうやらまだ訓練の途中だったようだ。

入ってきたのは白髪の青年。
海軍のような真っ白な軍服にキョンシーの様に顔にはられた御札、瞳は綺麗な青色…どっかのショタにそっくりだ。

青年は俺の方とちらりと見たが気にも止めずに男の首根っこを掴む。

「ﾋｨｯ！隊長お許しを！紅の隊長がお目覚めになったんですよ！？」

声も体も震えて、男はまるで子犬のようになってしまっている。
青年よりも見た目だけは大人で、ガタイもよく強そうだが
今の状況は誰が見てもその男は弱いと言うだろう。

そんな怯えた様子の男に青年は

「隊長かぁ、ここには居ないみたいだけど。僕が君の代わりにサボってやるからお前はさっさと訓練に戻れ。」

と少し冷やかすような声色で命令する。
薄気味悪く笑みを浮かべた青年の顔はまるで何かを察しているようだ。

この世の終わりを悟った様な顔をして男は「ﾊｲｨｯ！」と走って部屋を出て行った。彼には悪いことをしてしまった。
引き止めてしまったのは俺だと青年に伝えなくては。

「申し訳ない。俺が呼び止めてしまったんだ、どうか彼を叱らないで欲しい…」

色々教えてくれた彼がこれ以上叱られるのは胸が痛む。
俺は青年に頭を下げて謝った。