新 人 執 事 ≪ Daiki.S ≫

執事28. ページ28

あれから重岡が"もっとガーデンを見たい！"と言って数十分。

相変わらず目の前の重岡は楽しそうに花を見つめていた。









「うわぁ！すごいホースの量や！！」


『重岡ちょっとこっち来て！！』



ガーデンに何本も置いてある大きなホース。

遠くから見つめている重岡にそう声をかければ素直に近づいてきた。





一本大きなホースを手に取って蛇口を回す。

すると思い切り水が出て重岡にばしゃっとかかってしまった。









「ちょっと！！！何するんですか！！」


『あはははっ！！ドッキリ大成功！！』



びしょびしょになった重岡は対抗するように別のホースを手に取って。

そのまま容赦なく私にぶっかけてきた。









『ちょっと！！お嬢様に何するんよ！！』


「俺にとって今はお嬢様じゃありません〜！戦闘相手です！！」



訳の分からないことを言う重岡に負けじとホースの水を出す。

こんなに子供みたいに遊んだのは久しぶりで楽しくてうずうずした。









「あの二人朝から何やってるんや…？」


「あ！お父様！おはようございます！」



遠くから見つめていた神山の元にやってきたお父さん。

そんなお父さんにも気づかないぐらい私は重岡との時間に夢中になっていた。









「あの執事は…新人の重岡くんか？」


「はい、そうです…お父様が"この子になら任せられる！"と言っていた……」



「あんなにAが無邪気に幸せそうに笑ってるのは久しぶりに見たなぁ」


「僕も久しぶりに見ました、あんなに全部をさらけ出しているのを見るのは初めてです」



ばしゃっばしゃっと水が弾く音が聞こえる。

容赦なく水をかけてくる重岡がおかしくてどこか生意気でわくわくが止まらなかった。









「しげはどんなときでも絶対A様のことを助けてあげられる、そんな人ですよ」



そう言って微笑んでいた神山に気づかないぐらい私は夢中になっていた。

ふとホースが止まったときに少しだけ見えた小さな虹。









『見て！！虹！！』


「うわあ！すげえ！ホースの水で虹ができるんか！！」



この遊びが終わっていたときには二人ともびしょびしょになっていて。

ガーデンにある花たちはホースの水を浴びてまた綺麗に光っていた。








重岡といると心の底から楽しいって思える、ずっとこの時間が続けばと思える。









私は重岡といるこの時間が一番好きだと思った。

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