嫌い8 ページ8
幼い頃に芽生えた小さな小さな想いは、未だ揺らぐことはなく、その心の中にしっかりと残っていた。
そんな気持ちになかなか気付いてもらえない上に、子ども扱いしかしてもらえない。
もどかしい気持ちにイライラしながらいつだって考えてしまう。
いくら歳上でも彼女は歴とした女で、自分が少し力を出せば容易く組敷くことだってできるのに。
「…馬鹿か、俺は」
だが、それをしないのは彼女に嫌われたくないから。
彼女を傷付けたくないからだ。
頭を乱暴にガシガシと掻いた後、キルアはAの手をギュッと握り締めた。
キョトンとしているAに「これからは俺と一緒に行動しようぜ」そう言うと彼女は嬉しそうに微笑む。
「まあ、せいぜい追いついてこいよな！」
『それはキルアの方だよ！そうでしょ？』
「ばーかっ！俺は楽勝だっての！」
ーーーーまあ…あいつがいない今は、俺が隣に居ても良いよな。
『…キルアのばか』
ついさっきまで機嫌が良かったAだったが、今はテンションがとんでもなく下がっていた。
一緒に試験頑張ろう！と意気込んだのも束の間、キルアは新しい友達とさっさと行ってしまったのだ。
…まあ、友達が出来ることはいいことで、キルアはもっと小さい頃からそれを望んでいたから、喜びたいところだけれど…
『一緒に行けばよかった…』
気を遣って『わっ私はいいよ！先に行ってて！』なんて言わなければ…私にも小さなお友達ができていたはずなのに…！
第一試験が始まってから1時間、黙々と走りながらそんな事ばかりが頭に浮かぶ。
『はあ……あ、あの人』
深い溜め息を吐き捨て、気を取り直し前を見た。そこでふと目に入ったのは色白の肌に赤髪がよく映えている奇術師、ヒソカだ。
試験が始まる前から大分目立っていたので、注意していたが、少し近付きすぎた。
不自然にならないようさり気無く普通に速度を落とす。
ーーーーまあ、このくらいなら…試験官を見失わずに済むし
そう思ったところで、ヒソカは軽く後ろを振り返った。
突然の事に驚き、不自然に目線を逸らしてしまう。
ーーーーーー……まずい。
そう思っても既に遅かった。
ヒソカは意味深に笑みを浮かべ、先へ先へと走っていった。
『…何だろう、嫌な予感がする』
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作者名：アリエス | 作成日時：2018年12月23日 23時
