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捌く手つきに見惚れずとも ページ11

「包丁がいっぱいある!」


包丁ケースを前に声をあげる俺。そりゃあ、包丁ケースなんだし包丁があるのは当たり前のことなんだけど。テレビとかで見る、料理人が持つような形の違う包丁を見るとプロって感じでテンションは上がる。
隣の伊沢さんが苦笑したのが包丁の刃に反射して見える。ここまで磨かれてたらもう鏡なんじゃないかな。目の前にひろげられた複数の包丁のうち、見覚えがあるのは少ないけれどよく見るやつ…出刃包丁に手を伸ばすと、その手はカウンターの向こう側の新堂さんに防がれた。


「これ全部新堂さんのなんですか?」
「そやな、まあ主戦力はこれ」
「へー!あ、俺これ知ってる」
「まあ、出刃は料理人の代名詞みたいなところあるし乾君も見たことはあるやろな」
「確かにそうですね。出刃包丁って魚ですか?」
「魚おろすのはこれやな」
「へー!プロみたい」
「プロだから!偽物でもなんでもないから!」


俺の失言にツッコミをいれる伊沢さん。失礼なことを言っちゃったかな、と上目で新堂を窺うと怒っていなようなので安心。許可が出たようなものなので好奇心のままに質問をすることにした。クイズ王の伊沢さんなら聞かずとも知ってるかもしれないけれど、一般人の俺には知らないことの方が多いので。


「こっちは?」
「菜切り包丁。野菜の処理やな」
「この細いのは…」
「飾り切りの鎌形」
「この薄いのは?」
「蛸引き。隣は柳葉」
「あー、東西の」
「え?」


二人の会話についていけないな、と知識不足を痛感する。蛸引きと柳葉という二つの包丁はほとんど形が似ているけれど、柳葉という方は少しだけ先端が尖っていた。これがどうして関西関東の話に繋がるんだろうか、と首を捻ると伊沢さんが助け舟を出してくれた。


「蛸引きは関東で、柳葉は関西で昔は使われてて…えーと、確か柳葉が最近関東にも流通し始めた…でしたっけ?」
「うん、そやな。江戸っ子が尖ってるせいで尖りの無い蛸引きになった説もある」
「へー!知らなかった」
「それ本当ですか?」
「さあ?でも柳葉のほうが尖ってるから俺は好みやけどね」
「それは新堂さんが関西出身だからでしょ…」
「なは、どうやろなあ?とにかく、蛸引きと柳葉を併せて刺身包丁って言うんよ。他にも蕎麦切り骨切り船行切付…ぎょうさん種類はあるで」


満足したら、新堂さんは夜の開店準備があると俺たちを追い出した。本来空いてない時間に来たのに飯作ってくれて有難う。次はちゃんと食べに行こうと思う。

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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月5日 0時

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