パノラマ国のアリス奇譚 (ページ3)

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序章ページ3

？「目、覚めたの」

Aがやっと気がつくと、彼女は監獄の
ような場所の、檻の中にいた。

目の前の青年が、呆れたように彼女を見る。

『ねぇ、治、私…』

目の前青年_____太宰治はまた冷たい目線を
Aに投げかけた。

そしてため息を一つついて、手に持っていた本をプラプラさせてこう云った。

太「まさか自我がなかったとでも云うのかい？
君は、自分自身の異能を制御しきれず、異能が暴走を始めたんだ。私は愚か、森さんだって
君を止めるのに手こずったんだぞ」

そう云われて彼女は、自分の手を恐ろしいように見つめた。

『わ、私が？』

太「そう、君が」

『嘘だ、嘘だよ、ねぇ』

太「なら如何して君はこんなとこにいるん
だい？…五大幹部のくせに、ろくに異能の制御も出来ないようじゃ、困るよ。厄年かい？
厄年には詳しくないが、君は十四なんだから、
十三はとっくに過ぎてると思うけどね」

丸く云い込められて何も反論出来なかった。

嘘八百ではなくて、新鮮な事実であることが、
Aを妙に苛立たせた。

それと同時に、失望も襲った。

『ちょっと、私、そんなの、』

Aは立った。否、立とうとした。

手にも足にも鎖がぎっちり壁に繋がっていて、立とうにも立てなかった。

異能で壊そうと力を込める。が、

太「駄目だ」

ヌッと伸びた手がAの頭に触れる。

するとたちまち泡のように、発動しかけていた
異能が消えた。

太「森さんが来るまでこうしているんだ」

彼女は疲れて、ペタリと座り込んでしまった。
冷たいコンクリートの床が、肌と直に触れた。

冷たかった。

全て異能で補っているので、体力も常人以下
なのだ。

いくらか鎖を引っ張ってみたものの、全く戒めが解ける気配はない。

ようやく静かになったころ、忌まわしい音を
たてて、鉄の扉が開いた。