一人の人間として【陸ノ章】 ページ15
「Aさん!!」
『アイリスちゃん!!』
これぞ運命の再会である。
あぁ……私に向かって、走ってきてくれる。
私も彼女に向かって走っていく。
念願の、アイリスちゃんを抱き締める事が出来る……!
『ん？』
これこそ運命の悪戯だろうか。後ろに引き戻されている。
足が浮いている。ぷらぷらと。
･･･あれ、どういうことだろう。
斜め後ろを見る。
紅丸さんが、凄く怒っている。
え、え……嫉妬？えぇ。私達は、同性ですよ？アイリスちゃんは、敵じゃないですよ？
「……新門大隊長には、思い出してもらったんですね。」
『うん……。紅丸さん、お願いですから離してください。』
チッ…と彼は舌打ちをしたが、ゆっくりと地面に降ろしてくれた。
私は首もとを直す。
･･･あぁ、服の首の部分が伸びたかもしれない。まぁ、良いけど。
私がそもそもここに来た理由。
そもそもここは何処か。
そう……現在第8が匿われているところ。
私は、森羅さんに用があってきたのだ。
それに、何故か着いてきた紅丸さん。
『アイリスちゃん。森羅さんは、今いる？』
「はい、いますよ。呼んできますね。」
彼を呼びに、建物の方へと戻っていく。しかし、彼女は振り向いて付け加えた。
“勿論皆さんには、バレないようにします”と。
何故彼女は、私を覚えているのか。
もう薄々は気づいている。しかし、その答えを彼女に伝えようとは思わない。
彼女も、何も言わないから……森羅さんは、姉が出した仮説を話していないのだろう。
しばらくして、森羅さんが周りを気にするようにして出てきた。
そうしてる方が、凄く怪しい。
「Aさん、一体俺に何の用でしょうか？」
『……これからの事についてだよ。』
「……!!」
そうこれからについて。
私は第8には、もう戻れないであろう。
私に居場所など、もう存在しないことを。
紅丸さんは、運良く私を思い出してくれたが、そう皆上手くいくものではない。
だから私は考えたのである。これからの事を。
「……どうするんですか……？」
『……第7でお世話になろうと思ってる。』
私の横で、“おい、聞いてないぞ?!”と驚く声が聞こえた。
しかし、それは流した。
だって、まだ誰にも言ってないもん。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
また一歳……歳をとってしまった……。
『どこの老人だよ。』
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作者名：妃夏 | 作成日時：2020年11月17日 21時
