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須貝side
今日3本目の収録は、俺が打倒クイズ王を目標にやっているあのシリーズだった。司会は山本。さっきまでは早押しに参加できなくて少し落ち込んでいる様子だったが、今はにこにこしながら問い読みをしてくれている。
「問題!」
まだ俺にはハンデがあるものの、初めての頃よりだいぶ早く押せるようになっている気がする。今読まれているのは俺に有利な理系の問題。あ、わかった!と思いながらボタンを押すと、伊沢も同時に押していたみたいだが、光ったのは俺のランプだった。
伊沢に押し勝つって凄くない!?ドヤ顔でカメラに向かって口を開く。ピロピロリーン、と正解音が鳴って、思い切りガッツポーズをした、その時。
「……伊沢?」
ドサッと急に重みを感じて左肩の方を振り向くと、伊沢がこちら側に倒れ込んでいた。思い切り体重がかかっているから、本当に力が入っていないらしい。顔を覗き込むと、確かに少し火照っていた。
「伊沢、大丈夫?具合悪かったの?」
「ん、うぅ……」
体調を尋ねても、返ってくるのは苦しそうな呻き声だけ。背中に手を添えてやると、ぽろぽろと涙を流し始めた。伊沢が泣くなんて本当に珍しい。急に具合が悪くなることはそうそうないから、ずっと我慢してて辛かったんだろうな。
「ん、体しんどいね。ごめん、もっと早く気付いてやれればよかった。カメラ止めるから一旦横になりな」
ほんのりと熱を持つ伊沢の体をソファーに横にさせる。体温計とか取ってこないと、と思って立ち上がると、背後から短く息を吸う音が聞こえた。
「……山本?ちょっと、どうしたの?」
「っは、はぁ、ふぅ、っ」
目に涙をいっぱい溜めて、小刻みに体を震わせながら小さく浅い呼吸を繰り返している。彼の顔には不安そうな表情が浮かんでいた。
「不安になっちゃった?」
「だって、ぃざぁさ、っがっ、」
まぁ確かに、急に目の前で憧れの人が倒れたらびっくりもするよな。俺は何回か看病したことあるけど、伊沢は歳下にこういう姿を見せないようにしていただろうし。
「伊沢は大丈夫だから、ね、落ち着こ」
山本に声をかけている間も、ソファーのほうからはすすり泣く声と小さな呻き声が聞こえてくる。俺一人じゃ二人の相手はできないな、と思って、執務室にいる福良を呼んだ。必要なものを持ってすぐに来てくれるらしい。
「福良さん、伊沢のことお願い」
伊沢のことは福良さんに任せ、俺はついに泣き出してしまった山本を支えて一旦部屋を出た。
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雪月花 - すいません、どうしても分かんないです。色々有名そうなのを入れてみて全部出し尽くしちゃったんです。ヒントとか貰ったり出来ませんか? (6月18日 20時) (レス) id: a76a285c93 (このIDを非表示/違反報告)
NaHo(プロフ) - あの手この手で色々調べてみたんですが全くわからないので教えてくださいお願いします🙇🏻♀️ (2023年2月15日 23時) (レス) id: 45b193f19a (このIDを非表示/違反報告)
あくと(プロフ) - 頑張って考えたんですが続編のパスワードが分からなくて...ヒントなど頂けたりしませんか?お忙しいと思いますが返信頂けると嬉しいです (2022年3月11日 18時) (レス) id: ab17c965b8 (このIDを非表示/違反報告)
White - すごくおもしろくて2も読んでみたいな、と思ったのですが、ヒントをみて、思いつく数字を片っ端から入れても、どんなに調べても分からなくて、もう少しヒントを頂けませんか? (2021年10月31日 20時) (レス) id: 276347c53c (このIDを非表示/違反報告)
s.u - 私は、有名な4桁数字と調べたら出て来て、あ〜これか〜!ってなりました(今さらすみません) (2021年9月29日 20時) (レス) id: 4835169485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉怜 | 作成日時:2019年9月21日 23時