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伊沢side
「はっ、はぁっ」
「伊沢?大丈夫?」
勢いだけで話していたせいか、うまく息ができなくなった。落ち着こうと思うほど呼吸は速くなって、思わず手で口を覆う。
「伊沢、手離して?大丈夫、すぐ楽になるから」
何も考える余裕はなくて、いつもの福良さんの声だけが耳を通り過ぎる。言われた通りに手を離すと、かわりにビニール袋が口にあてられた。
「苦しいだろうけど、深呼吸意識してね」
「っ、すぅ、はぁっ、すっ、はー……」
「そう、その調子」
福良さんに体重を預けたまま、しばらく深呼吸をすることだけを考えていたら、だんだんと苦しさが軽減していった。落ち着いた?という福良さんの問いかけに頷く。
「……伊沢はさ、たしかにクイズ王だし、QuizKnockの社長だよ。だから、伊沢が完璧でいたいのもわかる」
真夜中の静まりかえったオフィスに、福良さんの声だけが響く。
「でも、そうやって自分を追い込むのは正しいこと?違うよね」
「……ぇ、?」
「伊沢だって人間だしさ、間違うことだってあるよ。うまくいかないことだってたくさんあるし、苦手なこともあるでしょ?立場の違う俺が簡単に言っていいことではないけど、伊沢が背負ってるもの、少し分けてくれてもいいんじゃない?」
福良さんのその言葉に、ふっと肩が軽くなった気がした。やっと止まっていた涙が、また目から溢れ出す。
「一人で頑張って辛い思いしてる人よりも、辛い時に他の人を頼れる人の方が、よっぽどカッコいいと俺は思うけどなぁ」
自分が思っていた以上に、俺は弱っていたらしい。こんなに泣いている姿を他人に見せたのは初めてだ。
「ん、じゃあ落ち着いたら寝よっか」
横になると、ふわりと掛け布団をかけてくれる福良さん。心地いいリズムで背中を軽く叩かれて、自然とまぶたが下りてきた。こういうことをされるのは苦手だったが、不思議と安心してしまう。この人がママと呼ばれる理由が、ちょっとわかった気がした。end
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ミータンさん、リクエストありがとうございました!
看病側はお任せということでしたので、福良さんにさせていただきました。
気に入っていただけたら嬉しいです(*´꒳`*)
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雪月花 - すいません、どうしても分かんないです。色々有名そうなのを入れてみて全部出し尽くしちゃったんです。ヒントとか貰ったり出来ませんか? (6月18日 20時) (レス) id: a76a285c93 (このIDを非表示/違反報告)
NaHo(プロフ) - あの手この手で色々調べてみたんですが全くわからないので教えてくださいお願いします🙇🏻♀️ (2023年2月15日 23時) (レス) id: 45b193f19a (このIDを非表示/違反報告)
あくと(プロフ) - 頑張って考えたんですが続編のパスワードが分からなくて...ヒントなど頂けたりしませんか?お忙しいと思いますが返信頂けると嬉しいです (2022年3月11日 18時) (レス) id: ab17c965b8 (このIDを非表示/違反報告)
White - すごくおもしろくて2も読んでみたいな、と思ったのですが、ヒントをみて、思いつく数字を片っ端から入れても、どんなに調べても分からなくて、もう少しヒントを頂けませんか? (2021年10月31日 20時) (レス) id: 276347c53c (このIDを非表示/違反報告)
s.u - 私は、有名な4桁数字と調べたら出て来て、あ〜これか〜!ってなりました(今さらすみません) (2021年9月29日 20時) (レス) id: 4835169485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉怜 | 作成日時:2019年9月21日 23時