兄さん攻略法3

攻略法126↓ ページ46

樹side


「……なに、笑ってるんですか？」


そう、私は成長してるんだ。


「私は出来損ないです。」


「何を当たり前のことを。」


「そうですね。当たり前のことです。だからこそ言わせて下せい。」



凛月くんが私もどん底から救ってくれたあの日


私はあの日からもう一度前を向くようになった。


少しでもいい、みんなには見えない速度でもいい。それでも目指すんだって。


「私の夢はお母さんを超えることです。今ここであなたにそう伝えておきます。」


「な！！！？？」


瑞稀さんは目を見開いて驚いている。多分史上最高に。


「な、何をふざけたことを。あなたにそんなことできるはずがない！！！」


瑞稀さんは声を荒げて言う。そして少し息が荒い。


「はい、知ってます。」


私が一番お母さんの凄さを知っているんだから。


「出来損ないが、プロの世界に行く？笑わせないで！！」


「笑わせるつもりもありません。私は本気です。」


何年かかってもいい。足掻いてみせる。出来損ないらしく。


「あなたは茜さんの足元にも及ばない！出来損ないです！！出来損ないらしく下を向いてればいいんです！！」


そうだね。きっと昔の私ならその言葉に納得してるだろうな。


何もかもに絶望した私なら。


でもそれはここに立っている私じゃない。


「もう一度言います。私は出来損ないです。それは何がなんでも覆されることはないでしょう。」


きっとお母さんのところに行くまですっごくかかると思う。もしかしたら死ぬまで届くこと
はないのかも。


プロにもなれないかもしれない。誰も私のデザインなんて見ないかもしれない。



「それでも私は。」





「足掻いて見せます。目指さなければ、何も始りません。ここで止まってしまったらきっと…いえ、絶対にもう走り出すことはできませんから。」





私は瑞稀さんから目を逸らさずにそう言う。


「っ〜〜〜〜〜〜〜！！夢を見て後悔するといいわ！！！」



そう言って瑞稀さんは顔を真っ赤にさせてズカズカと去っていった。

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