春、4話 ページ5
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次の日
昨日と変わることのない満開の桜の木の下で、そっと木に触れて桜を見上げている1人の姿があった
『おにーさーーん!!!』
土曜日の午前、少女は手提げを肩にぶら下げ両手を広げながら、目に入った男性へと猛ダッシュで駆けていく
それを見て察したのか、男性も片膝を地面につき両方を広げた
『よかったー!またあえたーー!!!』
そう叫んで勢いよく彼の胸へと飛び込んだ
彼は抱きしめた瞬間立ち上がり、笑いながらくるくると回る
少女は胸に埋めていた顔を上げ、今度は首に腕を回してギューっと抱きつく
「昨日の今日でまさかこんなにも懐かれるとはね…」
開けっ放しの笑い声で、少女の行動に応えるように更に強く抱きしめた
暫く抱きしめ合いながら笑い合っていると、少女が弾くように顔を上げた
『Aね!いろいろしらべてきたよ!』
手提げを両手で掲げキラキラした瞳で見つめられた男性は不思議に思いながら、ゆっくりと少女を腕から下ろす
『おにーさんについてわかりそうなことあったんだよ!!』
少女がそう言うと
「…俺も思い出したことがあったんだ」
『えっほんと!?』
少女に目線を合わせて、垂れ目を和らげて男性は言った
「うん、俺の名前は萩原研二…まあまだ名前だけしか思い出せてないんだけどさ。」
『はぎわら、けんじさん…』
「そんな硬い呼び方じゃなくてさ、研二くんとでも呼んでよ!」
にこやかに少女に告げると、少女もそれに負けない笑顔で言葉を返した
『わかった!けんじくん!!Aのこともおじょーちゃんじゃなくて、Aってよんでほしいな!』
「Aちゃんね、分かった。……そういえば、俺Aちゃんのことも知ってる様な気がするんだよね」
顎に手を当てAをじっと見つめた
『…Aのこと?』
「なんでか分からないんだけどね、昨日苗字を聞いたときに思ったんだ。
…まあ、そのうち思い出すと思うよ。
それより、Aちゃんの調べてきたこと教えて欲しいな。」
『あっ!うん!』
萩原の言葉にはっとし、Aは手提げからノートを取り出し広げて見せた。
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作者名:小春日和 | 作成日時:2021年5月27日 0時