50.何処かの文豪の言葉が酷くお似合いだ ページ50
沖田さんがあからさまに私を避けるようになった。
あの日以降、お互い何も無かったフリをしつつ、それでも以前のように振る舞っていたにも関わらず、突然である。
理由なんてさっぱりで、けれど時期的に考えると、やはりあの日のことが関係してしまうのかと思う。
さらりと土方さんや他の隊士に、沖田さんに最近何かあったのかと訊いてみても、有力な情報はない。
むしろ、「A副隊長の方がよく沖田隊長と一緒にいるじゃないですか」と言われる始末だ。
本当にそう見えているのか。現実とはこんなにも差異があるというのに。
「…………それを、なぜ僕に?」
「駄目なことは重々承知なんですけど、草間さんが以前、連絡くれればすぐに飛んでくる、と言ってくださったので」
無神経にも程がある。わかっている。
けれど誰にも相談出来ない。万事屋さんには、全て終わってからお話すると言ってしまったし。
土方さんや近藤さんにだって、小っ恥ずかしくて言えやしない。
「……あのですねえ、Aさん。薄々お忘れなのかと思われますが」
はあ、と悩ましげなため息をつく草間さんは、沖田さんとはまた別のタイプの男前だ。
沖田さんが、目がぱっちりして可愛めの顔だとしたら、草間さんはどちらかと言うと目は切れ長の、すっとした美人だ。
沖田さんと土方さんの間くらいの、端正な顔立ち。
「僕は貴女のことが好きなんですよ」
「忘れてないですよ」
「いいえ、忘れてます。忘れてるというより、意識の差を感じます」
「意識の差?」
草間さんは私に今まで見せたことのない表情を見せている。
普段はにこにこと笑って、優しい顔。けれど今は、眉間にシワを寄せて、険しい顔。
言うなれば、不機嫌だとか、怒っているような。
「好きな女性が、他の男の話をしていて気分が良いわけがないでしょう」
気づけば距離を詰められている。じり、と1歩退いた。
「今すぐ貴女を攫って、沖田総悟なんていう男のことを考えられないくらい、僕のことを考えて欲しいのに」
草間さんが沖田さんの名前を呼ぶのを、そう言えば初めて聞いたような気がした。
「いっそ閉じ込めて、僕だけのものにしたいくらい、貴女が好きなんです」
そう言った草間さんの表情は、やはり今までに見たことのないものだった。
(……恋は、罪悪だ)
────そして、次章が幕を開ける。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時