49.急展開は突如訪れる ページ49
「……、Aさん」
「は、」
呼ばれるがままに顔を上げると、すい、っと頬に両手を添えられて。
急に顔を近づけられるものだから、びっくりして身を引いてしまう。
それを強引に顔を寄せられると、勢いのついた頭がごちん、と音を立てて私の頭にぶつかった。
「お巡りさんでしょう。そんな頼りなさそうな顔しないでください。……何かあれば、連絡ひとつくだされば、僕はすぐに貴女の元に飛んで来るのに。」
それだけ言い残すと、草間さんはすっと私から離れて行った。
わかりやすい別れの言葉も、名残惜しそうに次回を仄めかすような発言もなく。
ただそれだけで、私の前から去ってしまった。
残ったのは額の痛みだけだ。
「……頼りなさそう、ね」
はあ、とため息ひとつ。自覚済みだった。
あの日以来、どうにも私はおかしい。
沖田さんの熱に、私まで浮かされてしまったように。
「……それにしても、頭突きって。」
案外古風で庶民的なところもあるものだ、お坊ちゃんも。
ズキズキと痛みを残す額を押さえながら、その場を後にする。
────誰かに見られていたとも、気づかずに。
◇◇◇
絶句。唖然だった。呆然だった。
見てしまった。見せつけられてしまった?
心臓が嫌にどっどっと音を立てている。
「……、」
Aは俺に背を向けていたから、どんな顔をしてたのかなんてわからない。
ただ、草間が、あのAのちっせェ顔に触れて、それから。
「…………」
思い出したくもないのに、鮮明に頭に蘇る。
────キス、したのだろうか。
いや、したんだろうな。
「…………。」
逆にキス以外であの距離っつったら何があるって言うのだ。
そういうことなのだろう、きっと。
喉がカラカラに乾いていた。
(……Aは、草間を好きになっちまったのか)
キスを許す間柄なんだったら、恐らくそうなんだろう。
モタモタと、この先に進めずに二の足を踏んでいたら、こうだ。
苛々が募る。それと同時にやるせなさ、それから何処と無く鼻の奥がつんと痛い。
「……A」
彼奴を呼ぶ声はこんなにも掠れて、振り返ってくれるはずもない。
俺の方が先に好きだった、俺の方が長く好きだった。
……そんなことは、一切関係ないのだろう。
「……はーあ」
わざと、軽い声を出してみる。全然軽くなどない。
十数年間引きずり続けた恋心が破裂したのだと気づいて、目元が熱くなるのを気づかないふりをした。
50.何処かの文豪の言葉が酷くお似合いだ→←48.余裕なんて本当はないのだ
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時