48.余裕なんて本当はないのだ ページ48
────何事も無かったかのように数日が過ぎた。
何事も無かったかのように振る舞って、数日が過ぎた。
沖田さんは何も言わない。
私は何も言わない。
あの日あったことなんて何も無かったかのように、あるいは全て忘れてしまえる程にちっぽけなことだったかのように。
「────Aさん」
「あれ、珍しいですね」
巡回中、滅多に街中では出会わない姿に目をぱちくりさせる。
「何だか久しぶりですか？草間さん。」
「そうですねえ、以前は僕が、貴女のお休みの度にお誘いしていましたから。
そろそろ飽きられるんじゃないかと思って、押してだめなら引いてみろ作戦を実行してたんですけど、効果はありました？」
「ふふ、まあ多少なりとも。」
「それはよかった」
ふわりと浮かべた笑顔は柔らかい。
草間財閥のお坊ちゃんは、決してただの七光りではなかった。
どうやら私と出会う前は、海の向こう側にある、草間財閥の会社の支店で代表取締役をしていたらしいのだ。
最初こそはコネだったものの、その功績は徐々に認められ、周りの人に認められるようになったとか。
「草間さんは、今日はどうしたんですか？」
「付き合いで食事に誘われていまして。向かっている最中に、お仕事中のAさんを見かけたものですから。」
「そんな、私の事なんて気にせず早く行った方がいいんじゃないですか？」
「…それは、早く行って欲しい、という嫌味ですか？」
「考え過ぎですよそれは…」
「冗談です」
「冗談に聞こえません……」
はあ、とわざと大きなため息をつく私を、草間さんはにこにこと笑う。
「ところで、
「ナイト……？あ、沖田さんですか？元気ですけど、草間さんと沖田さんって交流ありましたっけ」
「いえいえ、交流なんてありませんよ。ただ貴女の元気がなさそうでしたから、また原因はあの男なのかと。」
どき、と心臓が跳ねる。
また、って。
きょろきょろと辺りを見回す草間さんは、沖田さんの姿でも探しているのか。
「く────草間さん」
「どうしたんですか、急にそんな情けない顔をして」
そんな顔は自覚済みだった。
草間さんには筒抜けだ。
その原因は勿論私にもある、わかっている。けれど。
「…草間さん、沖田さんのことを見つける前に、早く行ってください」
「何故ですか？」
「………何だか、私が、落ち着かないんです」
理由なんてわからない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 472人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ！総悟！違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (
レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でｷｭｯとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓ｷｭｯってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました･･･笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます！ (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年8月17日 23時
