31.片思い症候群 ページ31
昨日の自分はアホだったのかもしれない、とふと思う。
他人に聞かれりゃ情けねェことこの上ねェが、Aが帰ってくるまで玄関の傍でも出来るようなことしかしていなかった。
うろうろ、うろうろと。
何度も時計を確認して、玄関をちらりと覗いては、何事もなかったようにうろうろと。
こういう時に限って時間ってのは進まない。
水でも飲むか、と自販機に行って、一息つく。帰って来た時にその会話は聞こえてきた。
「どどど、どうしたの、その恰好……」
馬鹿みてェなザキの声。それから続く、自信のなさそうなそれ。
「……似合わない、ですか」
とん、とん、とん、と足音を隠そうともせず、その場に近づく。きっと馬鹿な山崎は気づきもしない。
「似合ってないなんてとんでもないし!むしろか、」
「A、お帰ェり」
言わせるか、と思って出て行った。その時初めてAを見た。
行かせんじゃなかったと、後悔した。
……死ぬほど可愛いと、思った。
誰の目にも触れさせないようにして、自室まで送り届けてから、迎えに来た時の草間を思い出す。
『お姫様にしてあげますよ』
(……有言実行、ってか。クソ坊が)
悔しいことに大成功されてしまっている。
誰にも見せたくないくらい可愛くて、けれどそれは、やはりあの忌々しい草間が作り出したもので。
「それじゃあ、おやすみなさい、沖田さん」
「ん、おやすみ」
ぱたん、と静かに襖を閉められる。少し間を置いて、俺はずるずるとそこに座り込んだ。
「……だっせ、俺」
今日の夜、あのAをずっと占領してたってのか、草間の野郎は。
はーあ、と長いため息を吐く。
正気じゃいられない。草間に対する苛立ちも、Aに対する理性のぐらつきも。
「………………好きだ、A」
誰にも聞かれることなく、呟きは夜風に攫われた。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時