3.無意識に一枚上手 ページ3
まだ午前中とは言え、太陽は徐々に頂点へと向かっている。
そんな中、我々真選組一番隊は見回りへと繰り出した。
「あっちィー」
「まだまだ序盤じゃないですか」
早くも襟元をぱたぱたとさせて風を送る沖田さんを尻目に、分かれ道を通る事に隊士たちがそれぞれ自分の担当する道に散っていく。
「そう言えば沖田さん、昨日もまた新聞載ってましたよ」
「色男は記者からも人気で大変でィ」
「はは」
「なんだそのテキトーな相槌」
沖田さんが新聞に載るのは決まって良い話ではないので、皮肉も込めて言ったつもりだったのにさらりと躱されてしまう。
「うちの大事な隊長が有名になりすぎると妬けちゃうので、色男も程々にしてくださいね」
「…は、……」
見回りしながらなので、沖田さんの方だけに視線を集中させないで辺りを見渡しながら口だけで喋っていた。
だから、暫くの間、ついさっきまで隣を歩いていた沖田さんがいなくなっていることに気付かなかった。
「あれ!?沖田さん!?」
気づけばぽつんと1人で立っていた。沖田さんがはぐれたのか、私がはぐれたのか分かりやしない。
はああ、とため息をつく。一体どの辺りからいなかったのだろうか。
よりにもよって今朝、土方さんから直々に沖田さんを見張るよう仰せつかったところである。これはバレると非常にまずい。
サボるのは100%沖田さんが悪いのに、いつしか見張り係と命名された私も一緒に怒られるようになって随分と経つのだ。
沖田さんのサボりがバレたら、またお説教が飛んできてしまう。
慌てて元来た道を引き返す。あの人がよく行く団子屋は2つ隣の筋だったはず。いち、に、と本来の見回りルートから少し外れたところに、やはり沖田さんはいた。
「もう、沖田さん。勝手にいなくなってサボらないでください」
「うるせェぞA。てめーの頭なんかずっと俺のことで満たされてりゃいいんでィ」
なんて恐ろしいことを言うのだろう。
私の頭が沖田さんで満たされるということは、同時に土方さんのお説教を想像して震えるのと同義だ。それは阻止したい。
沖田さんの手を無遠慮に掴んで、最後のひとつの団子を勝手に食べてやる。
「……てめ、」
「ほら早く行きますよ」
無理やり手を引いて元の見回りルートに戻る。
ちらりと覗き見えた沖田さんは何処か不機嫌のように口を尖らせていた。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時