7.上司兼お兄さん ページ7
「全快です。昨日は迷惑かけました」
「そりゃよかった」
一晩眠れば熱は収まり、すっかり正常に戻った己の身体に感謝する。
いつまでもダウンされていては仕事が出来ないので。
ただでさえ、"女"というハンディが枷になっているのに、これ以上遅れてはならない。
やっぱり昨日の氷枕を用意してくれていたのは沖田さんだったようで、本人は頑なにそうだと言わなかったが、目撃情報があった。
「今日からまたバリバリ働きますね」
「暑ィから程々で」
「はい」
ひとまず沖田さんと分かれ、昨日やろうと思っていたことを済ましていく。
その途中で、土方さんに遭遇した。
「土方さん、昨日はすみませんでした。あの後熱出ちゃって……みんなと一緒に行かなくて良かったです」
「もう大丈夫なのか」
「はい。全快です」
「そうか」
んじゃ、と通り過ぎようとした土方さんを慌てて引き止める。
「あのですね、土方さん」
「何だよ」
「風邪ってキスじゃ移らないですよね」
「は?」
「貰ってやるって言われたんですけど」
「え?待てA。俺は今何を聞かされてる?」
「昨日沖田さんが」
「…………嗚呼……。それは多分、俺にしていい話じゃねェぞ」
「そう思います?」
「まァな……」
「ふふ」
「何笑ってんだ」
「自惚れちゃうなと思って。」
「…自惚れ、ってのは?」
「沖田さん、私のこと大好きでしょう」
土方さんは何とも言えない微妙な表情を浮かべて、気まずそうに煙草を咥える。
「……まァ、そうだな。総悟だけじゃなく俺も近藤さんもお前のこと、ちゃんと大事に思ってるからな」
「知ってますよ」
過保護ですもんね、と続けると、土方さんは眉間のシワを深めて、はあーとため息混じりに煙を吐き出した。
「……そーだな」
「でも私ももう子供じゃないですよ」
「分かってる…」
「そろそろ、みんなと同じように扱って欲しいです」
「……そうだな」
まるで苦虫を噛み潰したような表情では、何を考えているのかよく読み取れない。
「……あんまそれ、総悟の前で言わない方がいいぞ」
「何でですか」
「怒るから」
「怒るんですか」
「多分」
「じゃあ言いません」
「おう。じゃあな」
「はい。時間割いて貰ってありがとうございます」
はてそれにしても。
沖田さんに言ったら怒られるのか。
言ってみようかな。
472人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時