27.有言実行王子様 ページ27
鏡の中の自分が自分に見えなくて、まるで別人を見ているのかと錯覚してしまうほどに、そこにいるのは"お姫様"だった。
「よくお似合いですよ」
美容師さんが私の姿を覗き込む。
ヘアメイクと、コーディネートを全て他人任せにしたのは初めてだった。……とは言え、そうさせたのは他でもない草間さんなのだけれど。
「早く友彦さんに見せてあげたいです」
なんて微笑むこの美容師さんは、草間さんのお友達か何かだろうか。
お金持ちはやることが違う、とひとりごちる。
普段のシンプルなナチュラルメイクとは打って変わって、とても華やかな顔になっている自分をもう一度ちらりと覗く。
何処か照れくさくて、恥ずかしい。自分だったら選ばないような服も着ているから、尚更。
「さ、あちらで友彦さんが待ってますよ」
この人は一体何を何処まで知っているのだろうか。────私と草間さんの関係性を、どう認識しているのだろう。
実際はまだ顔を合わせて2回目だと、知っているのだろうか。
連れてこられたそこで、草間さんはソファに座って本を読んでいた。ドレスコードもされているものだから、その姿がやけに様になっていて、思わず怖気付く。
「友彦さん」
楽しそうな声が私の隣から響く。それに応えるように振り返って、その目線は私を捕らえた。
「…………あの、」
返事がない、動きもない。はっきり言ってここまでの無反応は怖いし堪えるものがある。
「………とてもよくお似合いで、素敵です、Aさん。」
ふわり、と花が咲いたような笑みを見せられた。なんて爽やか。
ソファから立ち上がった草間さんはこつりこつりとゆっくり近づいて、じーっと私を見回す。
草間さんは沖田さんよりも背が高いから、慣れ親しんだ高さよりも少し見あげなければならない。
嫌な緊張感を覚えながら、その視線が巡るのを眺める。
「本当に素敵です。思わず言葉を忘れてしまいました。」
「大袈裟ですよ、そんな」
「何が大袈裟ですか。こんなに素晴らしい人と食事を共にできるなんて光栄です」
「いやいやいや……」
全肯定マシーンか、この人は。
ぎこちなく笑顔を見せていると、すっと手を出される。これは。
「ぜひ、エスコートさせてください。Aさん。」
何ともキザな人だろう。優しげに細められた瞳に見据えられては、「はい」としか返事のしようがない。
そっと差し出された手に己の手を乗せた。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時