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#57 ページ10

────Side.伍代



バイクを走らせ、島崎のスマホに残されていた動画で真宮────年少から出てきた中学時代のツレに指定された場所へと辿り着く。散々殴られた島崎が縛られ地面に転がされていた。真宮はヘルメットを脱いだ俺をじっと見据えている。



「遅えよ直樹。あんまりツレを待たせんじゃねえよ」

「……真宮。お前マジで腐っちまったみてえだな」



バイクから降り、つかつかと歩み寄る。不安げな表情で見上げる島崎の姿は痛々しい。



「最近はえらいダセェのとつるんでんだな」

「うるせえな。島崎は関係ねえだろ」

「おい直樹、俺は仕事の話をしに来たんだよ」

「仕事?」

「簡単なもんよ。潰れかけの印刷工場からトルエンをごそっと頂くだけのことだ。これさえ上手くいけば、秋田組の人間紹介して貰えんだ。だからよ、手貸して貰えねえか。なあ、直樹」



肩に手を置いた真宮の顔を、握りしめた拳で殴る。血が滲んだ口元を押さえて、真宮は顔を歪ませた。



「……これがお前の答えか」



その言葉を皮切りに動きを見せた奴らを「邪魔すんな。お前らはそこで見てろ」と真宮が言葉で制した。そのとき、カランと何かがぶつかる音が────俺の背後側から響く。真宮はそちら側に視線を向けた。



「おい、誰かいんのか」



しんとした静寂の後、物陰から姿を見せる足音。その正体を確認しようと半身を翻して────目を見開いた。



「邪魔するつもりはなかったんだけど。私のことは気にせずタイマンどーぞ」

「お前……何してんだ」



派手なヤン服、かきあげた髪、口元を隠すマスク、それから……海外セレブ風のサングラス。真宮が1歩踏み出したのを見て「待って待って」とそいつは慌てて手で制する。



「邪魔するつもりはないんだって、伍代のことフクロにするなら飛び出して行こうかと思ったけど、タイマンなら話は別だから。絶対に手出さないから、ほら何ならここで座ってっから、ね」

「……何だあの女。直樹、お前のツレか」

「……まあ、そうかもな」



さっきまで場を埋めつくしていた緊張感が馬鹿らしい。本当にその場に胡座をかいてやがるから調子が狂わされる。



「……こんなとこに女連れてくるなんて、お前は大概甘えよな、直樹。この顔の傷────あのときのケリつけようぜ」



Aの登場により火に油を注いでしまったのかもしれない。────いずれにせよ真宮とはケリをつけなければならないと思っていたのだ。拳を握り覚悟を決めた。

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ぺぺろんちーの(プロフ) - いつもお話が面白くて更新楽しみにしています!続きも気になります〜♡! (2022年6月24日 17時) (レス) @page34 id: 3ba0f6d0b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年6月19日 11時

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