【銀魂】いいですか、沖田さん。

84.頼りにしちゃうの貴方のこと ページ34

「フーン、健気だねェ、カノジョ」



白けた目でこちらを見る饒舌な男に、唾でも吐きかけてやりたい。

けれどこちらは頭から流れる血も、腹からせり上がってくる血も、身体中の痛みも相まって、いよいよ意識が朦朧としている。



「草間さんに、迷惑、かけたくないんで、私のことなんか、ッ、気にしちゃ、だめですからね」



視界がぶれている。

草間さんがどんな顔をしているのかも、イマイチわからなくなってきた。

自分の喉からヒューヒューという危なそうな音が出ていることだけ、わかる。



「カノジョも強いねェ…何処で捕まえたの、こんな娘」

「……ッ」

「アンタも、カノジョも、こっちの方が堪えるんじゃねェの？」



どろり、と淀んだ笑みが、確かではない視界に映った。

仰向けにはっ倒されて、ゼエゼエと胸を上下させていると、饒舌な男がのしかかってくる。



(……あ、)

(ヤバいやつか、これ)



「Aさん！！！！やめろ！！！サインするから！！！」

「ハハ、この娘、Aチャンって言うの。」



気味の悪い手が、するりと足を撫でて全身が粟立つ。



(こ、れ)

(やっばい、なあ)



ドッドッと心臓が嫌な音を立てている。

抵抗しようにも、痛めつけられた身体に力なんて入るはずもない。



「おい！！！サインするって言ってるだろ！！！早く離せ！！！！」

「うっさいなあ…ちょっと黙らせといてくれる？」



さっきまでの、書類への承諾を求める態度は何処へやら。ガツン、と殴られる音がして、そちらを見ると草間さんが倒れ込んでいた。



「くさ、ま、さん」



なんてか細い声しか出ないんだろう。

徐々に衣服が緩められていく。気づかないうちに目尻から涙がぽとりと落ちた。



「泣いてんのォ？かーわいいねェ」



(……なんかキメてるでしょ、この男)



焦点合ってないんじゃないの。私が言えたことでもないけれど。

身体をまさぐられる感覚に、脳みそが警報を鳴らし続けている。



(……私がもっと強かったら)



草間さんを、自分を、ちゃんと護れていたのだろうか。

弱いままじゃ生きていけないと、わかってるよ、それでも、男女の差は憎らしい。



(…こわい、)



強がったって、平気ぶったって、所詮私は女の子でしかなくて。



「A、さん…」



消え入りそうな草間さんの声。



(…いやだ)



泣くことしか出来ない自分が、嫌で。



(………………たすけて)



「……沖田さん」



億が一にも、そう、願ってしまった。

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