69.昔話をしよう ページ19
母親が事故で亡くなって、間もなく後を追うように父親が病気で亡くなった。
私の両親は、この時代にしては珍しく恋愛結婚だったらしい。
だから母親を失ってから、父親は生気が無くなったかのように痩せて、それからころっと病気になって亡くなったらしい。
私を引き取ってくれた祖父母から教えて貰って、私は、自分ひとり残されたにも関わらず、幼心ながら「いいなあ」と思ったことを、ぼんやり覚えている。
ありったけの愛は祖父母に注いで貰ったから、そう思える余裕があったのかもしれない。
そんな風に、生涯における大切な人がいることは、どれだけ素敵なことなんだろう。
祖父母の自宅は武州にあって、物心ついたあたりには、私の自宅もそこになっていた。
────1度、勝手に外に遊びに行って迷子になったことがある。
何処かわからない場所に出てきて、けれど帰り道もわからなくて。
不安で足を震わせていた、そのとき。
『お前、どこからきたんでィ』
そう声を掛けられた。
声の主を振り返ると、私と背丈があまり変わらないような男の子ひとり。
むす、と口を噤んで、私の方をじっと見つめる大きな瞳。
『わ、かんない』
『迷子か』
『…うん』
我慢していた心細さが堰を切ったように溢れ出して、ぽろぽろと泣いた。
男の子はそんな私を見てアワアワとしていたが、私を安心させるようにか、ぎこちない動きで頭を撫でてくれた。
それがとても温かかった。
名前も知らない、顔も見たことがない。そんな男の子だったけれど、安心したのは事実。
『なんだなんだ!?どうした!オイ総悟!誰だその子!?』
そこに駆けつけてくれてたのが、後の近藤さん。
近藤さんは偶然にも私の祖父母と顔見知りで、この私の迷子話は、無事に家に帰ることが出来たというオチだ。
それから私は、あの男の子と出会った場所に通うようになる。…勿論最初は祖母に連れられて。
その男の子は、『また迷子か?』とでも言いたげな表情で私を見た。
『迷子じゃないよ』
『じゃあなんでィ』
『えっと……なんだろう』
『…一緒にやるか?』
『……なにを?』
見せられたのは竹刀。
男の子について行くと、そこでは近藤さんを始めいろんな人がいた。
それは稽古だった。
今まで自分がやったことのないことが、そこでは繰り広げられていて、いつしか見ているだけじゃ物足りなくなった。
『Aちゃんもやってみるか?』近藤さんからのその言葉が、私の転機。
70.たくさんのきっかけのお話→←68.秘密にしてねお兄ちゃん
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時