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66.神様、背中押し過ぎ ページ16

恋人繋ぎを引き摺るようにして、やっと屯所まで帰ってきた。

そこまで帰ってきてやっと、あれ、これ身内に見られたらヤバくないか、と思い出す。

恥ずかしいにも程がある。穴があったら入りたい。



「沖田さんっ、着きましたから!離してください!」

「嫌」

「なんで!」



男女の力の差が恨めしい。

離してくれそうにない手を、どうか誰にも見つかりませんようにと祈りつつとにかく屯所へ入る。

私がびくびくしながら廊下を歩いているのに、手を繋ぐ(もはや握る)沖田さんは何処吹く風。

押し込むようにして、沖田さんの部屋へなだれ込んだ。



「はあ…やっと着いた……」



部屋に入るや否や、豪快に床に寝転がる沖田さん。その反動で、ようやく繋っぱなしだった手が離れる。

沖田さんの体温がなくなった自分の手が、急に寒さを感じ始めた。



「……沖田さーん」



呼びかけてみるも、沖田さんは仰向けになって瞼を閉じている。

歩いている間もずっとゆらゆらしていたから、ほとんど寝ぼけていたんだろう。



「……」



とくん、とくんと柔らかな鼓動が私の中で響く。

ずっと握られっぱなしだった手には沖田さんの熱が残っているようで、じんわりと汗ばんでいる。

用事が終わったのだから、さっさとこの部屋を後にすればいい。けれど出て行けないのは何故だろう。

寝転がる沖田さんから目が離せないのは、まだ離れたくないから。

あんなにも気まずくてぎこちない空気だったのに、嘘のよう。

どきどきが抑えられないのは、沖田さんが酔ってるから。

酔ってる沖田さんが、手なんか握るから。

今ならきっと、何をしたって、この人は覚えてないんだろう。



(……そもそも起きないか)



静かな寝息は相変わらずだ。

綺麗な寝顔は昔から変わってない。

その顔を覗き込むようにして、頭を垂れる。

今なら誰も聞いちゃいない。



「……好きですよ、沖田さん」



届かないのがもどかしいと思ってしまう程には、好きであることを認めてしまっている。

ひとりで勝手に照れくさくなって、勝手に切なくなって、部屋を後にしようと立ち上がりかけて。

幸か不幸か、神様が微笑んだのか意地悪したのか、手首に感じる重みに、え、と視線を向けたところで。

ぐるんとひっくり返る視界。身体に広がる衝撃。

背中に感じる床の感覚。それから、少し遠くに映るのは────天井?



「……お前、俺のこと好きなの」



ひゅ、と喉が鳴ったのは、自然の摂理。

67.「恋は罪悪ですよ」→←65.体温が混ざり合う



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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時

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