62.包み隠さぬ胸の内 ページ12
「……意地悪です、草間さんは」
私がそう言うと、草間さんは暫し固まって、それからはああと大きなため息をついた。
「そんなに可愛い顔をするのはやめてください。切るに切れないでしょう」
本当に、厄介で、面倒くさくて、苦しいだけの恋は、罪悪だ。
どちらがいいだなんて返事も出来ずに俯いていると、草間さんはぽんぽんと私の頭を撫でた。
「……確かに、意地悪しすぎてしまったみたいですね。けれど、僕は本気ですよ、友達になる気はさらさらありません。
貴女がそんな僕を拒まないということは、僕からの夜も寝かせないようなラブコールを受ける覚悟があると、そう受け取りますよ」
そう言って、暗くて広くない路地裏で草間さんは立ち上がる。
────「沖田総悟より僕の方が良い男ですから」、それだけ言い残して、踵を返して去ってしまった。
「……」
いろんなことが短時間で起こりすぎている。
友達になりたいと言った黄川さんのこと、その横顔を見たこと、友達にはなれない草間さんのこと。
(……いつまでも子供のままでいたい私には、キャパオーバーだ)
草間さんと話していたおかげで、込み上げてくる熱は収まっていた。
そういうところも含めて、いい男なのかなあと思う。
(…あ、)
もうすっかり鼻が慣れてしまって、何も感じなくなっていたけれど、確かに私の肩には草間さんから掛けられたジャケットが残っている。
『僕は本気ですよ』
その声が頭に蘇る。
(……沖田さん、)
会いたい。
無性に会いたい。
その理由なんて、十数年前からわかりきっている。
蓋をしきれないほどに、たったひとつの小さなきっかけごときで溢れてしまった。
"それ"は許容範囲を超えて、床をびちゃびちゃに濡らしてもまだ足りない。
海でも作ろうとしているかのように、それはいくらでも湧き出ては溜まるばかり。
(…、沖田さん)
関係を崩したくない、今のままが1番幸せだ。
そう思って、思い続けて、思い込み続けて、こんなにも時間が経ってしまっていた。
きっかけは小さなこと。彼を見る彼女の視線に熱がこもっていた、ただそれだけ。
ただそれだけで、いとも簡単に蓋をこじ開ける。
……ここなら誰にも聞かれない、気づかれない。
だったら少しくらい、零してみてもいいだろうか。
どうせ少し掬って服を濡らしたところで、関係など変わりはしないのだから。
「……好きです、沖田さん」
初めて口にした言葉は私を縛り付ける。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時