57.人生初のすれ違い ページ7
『ヤベェもん見ちゃった』
「わざわざそれを報告するために連絡くれたんですか」
────電話口でそう切り出してくるのは、しばらく顔を合わせていない何でも屋さん。
私からの依頼がないから、あちらから連絡されることもなかったのだけれど、急に電話が鳴ったものだからびっくりしてしまった。
『そんなことよりやべェってAちゃん』
何となく、聞かずともわかってしまった。
頭の中で、銀さんの次の言葉を予想する。
『俺見ちゃった。沖田が女と歩いてるとこ』
「……そうですか」
『何、反応薄くね?』
「わざわざそれを言うために電話するなんて、銀さん暇なんですね」
『失礼なこと言うんじゃねェ!銀さんだって暇じゃねェ時くらいあらァ!!』
はは、と苦笑。
『いーの、Aちゃん』
「何がですか」
『このままだと沖田、取られちゃうんじゃね』
「……、」
"取られる"。その単語がずしりと重くのしかかる。
そもそもの話、沖田さんは誰のものではないし、無論私のものでもない。
取られるだなんて、そんな言葉は似合わない。…はず。
『Aちゃんに元気がねェのも、どーせ沖田のせいだろ』
電話越しに聞こえる声はからかうような響きも持つのに、そこには優しささえ感じられる。
「……そうですね」
『いやに素直じゃねェの。』
「銀さんにはきっといろいろ、バレバレだと思うので」
『ふは、あのな、Aちゃん。結構俺じゃなくても、お前らってわかりやすいんだよ』
「お前ら……?」
『そーいうことだから、オシゴト頑張れよ、お巡りさん。』
一方的に電話を切られた。
突然掛けてきて、突然切られるなんて、なんて勝手な人だろう。
思わず小さく笑みを零す。素直に笑ったのは何だか久しぶりのような気がした。
「……沖田さんも、わかりやすいのかな」
昔は何でも、沖田さんのことをわかっていたのに。
時代は過ぎる、時間は重なる。
昔のままではいられない。
「……わかってるんだけどなあ」
それでも臆病なのは、自分に自信がないせいがひとつ。
いつまでも大人になりたくない、子供のままでいたい、変な意固地がひとつ。
私たちの関係が変わってしまうのが怖い、"今"にしがみつきたい気持ちがひとつ。
(……あ、でも)
("今"のままは、嫌かなあ……)
ぎこちない空気には、慣れそうにない。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時