51.そうして物語は動き始める ページ1
両親が私を置いて空の世界へ旅だったのは、ちょうど私が物心ついたくらいの頃だった。らしい。
そんな昔のことをもう覚えてなんかいないから、これは後に私を引き取ってくれた祖父母から話されて知ったことだ。
両親がいなくなったことは、なぜだか鮮明に覚えている。
それがいつだったか、まではさすがに覚えていなかったけれど。
私の両親はきっと優しい人だったんだろうな、と言われたことがある。
なぜですか?と訊くと、Aがこんなに優しい子になったんだから、親御さんが優しくないはずがないと応えられた。
両親はきっと優しい人だったろうけれど、そうだとしても私は両親を覚えていない。
両親のおかげで私が"優しい子"になったというのも、イマイチ納得が出来ない。
優しさを感じる前にいなくなってしまったから。
だから、もし今の私が、あの頃に戻れるのならば、私はあの人に、あの人たちに、こう言いたい。
『私が優しい子になったのは、あなた達が優しくしてくれたからですよ』
と。
◇◇◇
────数日が過ぎた。
あの日から、沖田さんに避けられ初めてから、草間さんから苦しそうな告白をされてから。
私は未だに草間さんとはお友達のままだし、沖田さんとは他人のままだった。
それが酷く苦しかった。
そして気づけば季節は移り、暑さは鳴りをひそめるようになった。
変わりたくないと願っていても、こうして世界は今も変わっていた。
草間さんからはあれ以来、音沙汰がない。
沖田さんに避けられていると気づいてから、私は極力土方さんにくっついているようになった。
最初の方こそ、土方さんも「お前は一番隊だろ」なんてぶつくさ言っていたが、今となっては黙認して貰っている。
それほどまでにわかりやすく、沖田さんは私を避けていたし、いかに以前までがべったりだったかを理解した。
「総悟は見回り中、サボらずやってんのか」
「…さあ、どうなんでしょう」
「さあ、はねェだろ、一番隊副隊長殿」
土方さんのその言葉に、思わず苦笑する。
例え土方さんに引っ付くようになったとしても、真選組というのは決して趣味でも慈善活動でもなく────お仕事だった。
きっちりお給料を頂いている、お仕事だった。
「総悟と気まずいのは分かるが、せめてサボってねェかだけでも見張ってろ」
「……わかりました」
それがせめてもの譲歩だと、鈍い私にだってわかるのだ。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時