ご主人様の言う通り (ページ1)

今日:6 hit、昨日:8 hit、合計:49,099 hit

1 ページ1

「おはようございまーす」

いつも通り出勤。
でも何かが違う。

「部長、あの皆さんは？」

部長「あぁ聞いてなかったのか」

「何がです？」

部長「倒産したんだよ」

「倒産？」

部長「そっ。連絡したはずだけど？」

携帯のメール履歴を確認する。

『会社が倒産した為、本日出勤なし。明日荷物の整理を行います。いつも通りの時間に来てください』

ほんとだ。あった。

「部長、あの倒産ってほんとなんですか？」

部長「本当だって言ってるじゃないか」

「それにしては話に重みがないというか…軽いというか…」

そうだ。軽すぎるんだよ。
嘘だよね…きっと

部長「終わったことは仕方ないだろ？今更何するんだい」

「そうですけど、でも何か手はあるんじゃ…」

部長「なに、お前俺に文句あるわけ」

「いや、そういうことでは…」

部長「分かったなら早く帰れ。俺は今から社長のとこに用事あるから」

…なんだか呆れた。
先輩を慕ってきた自分が馬鹿だったのかな
こんな会社、倒産したって当たり前だわ…
私は無言で出ていった。

家に帰ったけど社宅だってこと思い出しては、いらいらを思い出す。
いっそ引越しでもしよっかな…
思い立つと動くのが早い私は、まだ朝早いこともあってすぐに不動産屋へ向かった。

「すみません。今住んでる社宅を出て、引っ越したいと考えてるんですが。」

不動産屋「そうですね。そうなると……」

それから引越しについての説明をかれこれ30分くらい受けて、(まぁあんまり聞いてなかったけど…)家の候補が上がった。

だけど、現実は甘くなくて、どれも今の貯金じゃ無理だ。それにこの先仕事がどうなるかも分かんないし…とりあえず実家に帰ることにした。

「えーっと、新幹線の切符売り場は…」

私の実家はここから新幹線で１時間くらいのとこにある。

「あった！…嘘でしょ」

今日はほんとに嘘みたいなことばっかり。
『事故のため、運転休止』
それよりなにより、カバンの中を見ると財布がない。どこかで落としたみたい。

「はぁ…」

ほんとに…ため息しか出ないよ…
こっから社宅までバスで１時間だから、歩いたら…考えるだけで恐ろしい。
雨まで降ってきて、私悪いことしたかな？って何度も自分に尋ねる。思い当たることはないけど…
私は仕方なく、駅の中で雨が止むのをずーっと待ってた。ずーっとずーっとずーっと。

？「あの…待ち合わせかなにか？」

その人の声を聞くまでは。
時計を見るともう0時を回ってた。