白銀の彼女は能力者〈stpr〉 (ページ6)

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《全力で》ページ6

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後片付けを終えてゲートを潜り、自分の教室へ戻ろうとした時、ふと視界に見覚えのある影が映る。ゲートの出口付近に佇み、こちらを鋭い目で見つめるさとみ。

「……お前、何者だ？」
「あ、すみません。自己紹介が遅れましたね。ストロベリー騎士学院Eクラス、Aと申します」

そんなことを聞いてるんじゃねぇんだよ。吐き捨てるように呟く。

「では、何をお尋ねに？」

「お前の能力。《雪月華》なんてウソだろ」
「本当ですよ」

話しながら右手を軽く掲げ、ちらちらと雪を降らす。舞う雪にちらりと目をやった後、彼は大きく溜息を吐いた。

「……なら、さっきの音は？」
「特訓ですね」
「なんの」
「《雪月華》です」
「嘘だろ」
「ほんとです」

キリがない。

「……わかった」

再び大きく溜息を漏らした彼がそう言ったので、やっと解放されるかと思ったのに、

「俺とお前、今から勝負な」

続け様に放たれたそんな言葉とともに、睨みつけられた。

「勝負、ですか？」
「ああ。全力でやれよ」

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──全力で戦え──

……ダメだ。
その言葉はダメだ、イヤな記憶が蘇る。

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「全力で？」
「うん！A、強いんでしょ？」
「わかんないよ。この力にきづいたの、今日だもん」
「じゃあなおさら！私も強いから、Aには負けないよ！」

かつての親友。今は亡き、大好きな、大切な人。

「まだ使い方わかんないのに、ごうじょうだなぁ」
「私は《ほのお》の能力だから！Aは《こおり》使ってよ！」
「うん、わかった」
「じゃあいくよー！！」

張り切った声とともに、大きな炎が迫ってくる。

──全力で！──

そんな彼女の言葉通り、私は。

「《絶対零度》」

その時だせる、全力を出した。

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「A！寒い寒い寒い！」
「え？」

絶対零度。全ての細胞活動が停止する温度。彼女は、私の能力を直に受けた。
寒い、なんて言葉が出たのは、炎を使っていたせいで最初はよく分からなかったからだろう。

「……え？」

動きが止まった彼女に触れる。
ぱらぱらと、まるでそこには、元から命を宿すものなんていなかったかのように、

彼女は崩れていった。

「わ、たしのせい……？」

かつては人間だった冷たい塵を見つめる。
ごめんなさい、なんて言葉じゃ済まされない。

ヒトの命を奪ったんだ。……大切なものを、壊したんだ。

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わたしが、

壊したんだ。

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