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『 海人 』
海人「 ‥‥。 」
『 こっち向いて 』
海人「 やだ、 」
お腹に顔を埋めていた海人の頬を
両手で優しく包んで目を合わせるために
ゆっくりと顔を上げさせる。
海人は腰に回していた手を離して、
私から気まずそうに目を逸らした。
『 なんで目合わせてくれないの 』
海人「 ‥‥Aちゃんの顔見たら
泣きそうだから無理、 」
そんな海人の言葉に、ふっと笑うと、
「 笑うところじゃない 」と少し怒られた。
『 最近の海人はいつも楽しそうで、
レギュラー番組でも楽しそうに出てるし、
自分の考えとか意見とか、
気を使わないでハッキリ言えるようになったし
あー、大人になったんだなぁって勝手に思って
私は少し寂しかった 』
海人「 ‥‥え？ 」
『 前までは困ったことがあれば
すぐ“ AちゃんAちゃん ”って
寄って来てくれたのに
20歳になってからはそれもしなくなって
私の方が海人は遠い存在だなって思ってた 』
口をポカーンとしたまま私を見つめる海人に
笑みがこぼれてしまう。
『 簡単に言えば、
海人が甘えてくれなくなったから寂しかったの。
でも、それは違ったね 』
海人「 ‥‥ぇ 」
『 海人に我慢させてた‥‥。
こんなに一緒にいたのに
気付いてあげられなくてごめん
謝るのは私の方だよ、海人 』
海人「 ‥‥、A、ちゃんっ 」
ツーッと海人の頬を伝った涙を拭いてあげるけど、
ポロポロ、ポロポロと両目から溢れてくるから
「 泣き虫は変わらないなー 」と笑ってしまう私。
海人「 Aちゃん、忙しいから、っ
LINEの返信も遅いしっ、電話もっ、
タイミング悪くて、繋がらなくてっ、
‥‥でもいつも、みたいに俺がっ、甘えたら、っ、
Aちゃん、休めないっておも、って、っ
Aちゃんっ、に甘えちゃ、だめだって、
れ、んに、言われたからっ、おれっ、っぅぁ 」
『 え、ちょ、っ 』
えぐえぐと泣きじゃくる海人の姿に、
慌てて立ち上がって鞄の中に入れておいた
新しいタオルを持って素早く海人の元へ戻る。
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作者名：ねむ
| 作成日時：2020年9月6日 15時
