同級生 〜age 32〜

23　二宮 ページ23

『櫻井が 倖せだと思うから 気持ちを抑えることも 出来るのに』
　なんで 今更 離婚なんて…』

大野が口にした その言葉は
オレたちがココロの中に 押し殺している想いと 重なって
ガツンと 胸の奥を 攻撃してくる


当の本人は 櫻井の寝ているベットにもたれて
すうすうと 気持ちよさそうに 寝息を 立てているけれど…



「…そういえばさ
　
　櫻井の結婚式の日も こんな風に 4人で飲んだよね」

「…飲んだねぇ―」
「今までで 一番 飲んだかもしんねぇ」
「飲んでも飲んでも 全然 酔わなかったけどな」

沈黙に耐えなれなくなった 相葉が 思い出したように 話し出し
さっきの 大野の言葉は 聞かなかったような顔をして
オレと 松本も 相葉の話に加わった


「…あの時は 松本ﾝち だったよね

　結婚式終わって 二次会終わって 櫻井と嫁さんを見送った後
　松本ﾝち 寄ってさぁ

　あの時 ホント 大変だったんだからね」


相葉は 櫻井の寝顔を ちらっと見て 小さく笑いながら
懐かしそうに 話し始めた


「…だってさぁ

　二宮は 松本ﾝちについた途端
　引き出物の包んである 包装紙とか
　のし紙とか すんげ―勢いで ビリビリ破き始めてさ

　引き出物の中身も 全部 部屋ん中に ぶちまけてくれてさ

　アレ 夜中に 無言でやられて
　オレ ホント 超怖かったんだからね」


「やってね―し
　知らね―し」


…嘘だ
ホントは はっきり 覚えている



あの日

スポットライトを浴びて 高砂の席に座る
タキシード姿の櫻井を 見たくなかったオレは

　
今日の記憶が なくなればいいと思いながら
いつも以上に ガバガバ 飲んでいたのに
こんな日に限って ちっとも酔わなくて


見かねた 相葉に『もうやめなよ』と 止められた


二次会では
　
『今日は 今まで生きてきたなかで 一番シアワセな日です』

…と 涙をこぼす嫁さんの肩を そっと抱き寄せる 櫻井にイラついて
カラオケで 何気に ミスチル『Over』を 熱唱してやった


櫻井が結婚式をあげた日は
オレの 32年の人生の中で 一番最悪な日だった
　



　

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す