107：不解の時間【MASAKI】 ページ7
櫻「…んっ…。」
相「…しょーちゃん？」
櫻「…っ、あ…っ…。」
相「大丈夫、大丈夫…。」
ソファーの上で目を覚ますと、すぐに呼吸を乱し始めた翔ちゃん。
苦しそうに目をつぶって、胸のあたりをキュッと掴んでいる。
相「翔ちゃん…、大丈夫、大丈夫だよ…？」
しばらくして落ち着いた翔ちゃんは、ぽろりと大きな瞳から涙を零して。
ふらりと俺によりかかってきた。
いつの間にか、熱くなっていた体。
…きっと、ストレスからくる精神的なもの。
色んなことがありすぎたんだよ。
考える時間も休む時間も、翔ちゃんにはなかった。
突然自分の体が言う事を聞かなくなって、急に病気だと宣告されて…。
翔ちゃんの心は、きっと限界だった。
相「翔ちゃん…。」
いつの間にか握られた、俺のシャツの裾。
俺によりかかる体から、カタカタと細かい震えが伝わってくる。
櫻「…ぅ…、ぁ…っ…。」
相「翔ちゃん…？翔ちゃん、聞こえる？！」
耳元で叫ぶと、うっすらと開いた虚ろな目が俺を捉える。
櫻「…っ、…ぃばちゃっ！」
相「ぅおっ！」
どこから湧いてきたんだって位の力で俺に飛びついてきた翔ちゃんは、俺を痛いくらいに抱きしめる。
相「翔ちゃん、翔ちゃん！
どうしたのっ？！」
櫻「ぁ…、あっ…、助けて…っ…！」
叫ぶように言った彼は、あるはずもない冷たい金属の脚を触る。
相「ねぇっ…、翔ちゃん…っ…、」
櫻「痛い！痛いの、助けてっ！！」
相「えっ…？」
翔ちゃんの、俺の腕を掴む左手と、冷たい右脚を触る右手に力が入る。
翔ちゃんは泣き叫んで俺に言うんだ…。
櫻「助けて、たすけてっ！！
いたい…、痛い！
脚が…、脚が痛いよおっ！！」
…幻肢痛。
無いはずの手足があるように感じて、鋭い痛みに襲われる難治性の疼痛。
分類は、『心身症』。
つまりは、心の病気だってこと…。
元々体にないものだから、薬も点滴も、やりようがない。
治療法もまだ確立されていなくて。
病気や怪我で、手足を失った人の多くが、この症状を経験するという。
その痛みっていうのが、かなり強いらしくて…。
耐えるように俺の腕を握る翔ちゃんの力も、幻肢痛の痛みの波に比例して強くなる。
もう、俺にどうこうできる範疇じゃなくて…。
こんなに苦しんでいるのに、何も出来ない自分が歯痒くてしょうがない。
…俺はただ、苦しむ翔ちゃんの背中をさすりながら横に座っていることしか出来なかった。
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櫻(プロフ) - 更新頑張ってください！のんびり待ってます (2021年6月9日 21時) (
レス) id: 6316d6d95d (このIDを非表示/違反報告)
廣井愛莉 - 更新頑張ってください (2020年11月20日 22時) (レス) id: 5102f37191 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 爽果さん» 暖かいお言葉を頂き、ありがとうございます。印象的だなんて…、恐縮です…。ご愛読頂き感謝です。これからもどうぞよろしくお願い致します。 (2020年6月19日 1時) (レス) id: 622e401bd5 (このIDを非表示/違反報告)
爽果 - 初めまして。この作品は継続して何度も読ませて頂いております。色々考えさせてくれるとても印象的な作品です。これからもゆっくりでいいので更新お願いします。待ってます。頑張ってください (2020年6月18日 21時) (レス) id: 2f4d1519c6 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 青黄赤橙桃LOVEさん» 私は学生の身分ですので、世間知らずな部分があるかとは思います。また、障害と向き合っている当事者の方々にしか分からないことも数え切れないほど沢山あるはずです。不自然な場所等ございましたら、教えて頂けると嬉しいです。これからも、ここでお待ちしております。 (2020年5月20日 0時) (レス) id: 622e401bd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くろしば | 作成日時：2019年5月19日 17時
