キヨさんとコーヒー ページ1
片方がカッコつけてコーヒーのブラックを頼むも一口目で挫折し、結局相手に押し付け合うふたり
スタバなんて久しぶり、と冷めた顔で言うAをよそにカウンターへ歩を進める。飲み物さえ頼めりゃそれでいいし、なんなら家で綾鷹飲んでる方がいい。しかしながら今は外、俺より何倍もインドアなこの女を外に連れ出すのは容易ではない。こちらから連絡しないとうんともすんとも言わないような女だから手が掛かってしょうがない。好きでやってるんだろうと言われたらまぁ、その通りである。
「お前何飲むの？」
「ブラックコーヒー」
「飲めたっけ」
「チッチッチッ、舐めてもらっちゃ困るね」
「すいませーん、ブラックコーヒーとアイスティーお願いします」
「無視か？」
「うぜえ」
「ブラックも飲めないお子ちゃまに暴言吐かれても」
「黙ってろ馬鹿！」
「いったい！！」
鼻でせせら笑うこの女に拳骨を食らわせれば頭を抑えて痛みに堪えている。大体こいつの物言いと言い態度と言い小学校低学年と大差ない。俺も大概だから普通に馬が合うし、気の置けない仲だと思っている。思考回路が似ていると言われたことがあるがそれはどうかと思う。だって俺絶対ぇこいつより頭いいもん。
と、余談はさておきだ。
俺からするとクソマズい苦いだけのブラックコーヒーを手渡す。ドヤ顔を俺に向けて、コーヒーを啜った馬鹿はぎゅっと眉間に皺を寄せた。無言でコーヒーから口を離したAは黙ったまま砂糖を数個手に取り、袋を開いて投入していく。スティックシュガーを5つ投入したAはまだ黙りを貫いている。静かに口元に寄せたコーヒーを傾けた。
「……きよぉ、」
「あー聞こえない聞こえない」
「交換しよ？」
「普通の紅茶だぞ」
「そっちがいい〜〜〜！！！」
「駄々こねてんじゃねーよバカ！だから言っただろーが！」
「お願い…」
「っ〜〜ああもう！！ほら！！しゃーねぇから交換してやるよ…」
まるで子犬が耳を下げて悲しむかのようにしゅんとした顔をするAは心から反省している。が、学習しないので絶対まだどっかでやる。分かっているのに止めない俺も悪いかもしれないけれど、こいつのこの顔が見たくなるので仕方ない。確信犯だとかそういう言葉は受け付けません。悪いのは全面的にAである。だが、それでもやっぱり。
「きよ、ありがと」
最後に笑った顔見してくれんなら、意地悪すんのも甘やかすのも悪くねぇと思っている自分がいるのも確かだ。
執筆 18.03.22
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作者名：小夜子 | 作成日時：2018年3月22日 2時
