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「ねえ、優斗、ネクタイの結び方これであってるの?」



洗面所の扉を勢いよく開け入ってきたのは龍斗くんだった。
龍斗くんも胸元に高等部のネクタイをつけている。


男子は紺色に水色と赤のライン。
中等部の男子の制服はネクタイがなく、少し変わった形のシャツだったから、龍斗くんのネクタイ姿を見るのはこれが初めてだ。
綺麗に整えられた結び目は、龍斗くんの器用さをそのまま表しているようだった。



似合っている。
すらりとしたスタイルと、きりっとした涼し気な目元も相まって、大人っぽく見える。
ネクタイなしの制服を着ている時はギリギリ私より年下に見えなくもなかったが、こうなってしまうと、もう年上にしか見えない。
本当は私の方が17か月も年上なのに。



「Aちゃんはネクタイ着けないの?」



子どもみたいな声色で疑問がぶつけられる。
ネクタイが似合わないどころか自分で結べやしないことが急に恥ずかしいことのように思えてくる。
あんなにあどけない喋り方をする子が、こんなにも着こなしているというのに。



優斗くんにやってもらったの、と小さく呟き、両手でぎゅっと握りしめていたネクタイをそのまま頭から被る。
けれども長さの調節の仕方が分からない。
優斗くんはいつもどうしてたっけ。



どうやるの?と聞くよりも先に左隣に立っていた優斗くんが「引っ張るんだよ」と教えてくれた。
言われたとおりにだらんと垂れ下がった帯を掴んでそのまま下へと動かす。
しかし、形が歪になっていくだけで、頭に思い浮かべている形にはならない。
どんどん理想からはかけ離れていく。




「違うって、結び目をもって後ろの方だけ引っ張るの」



「そうなの?だったら、それ先に言ってよ」



「1週間前から何回も教えてますー」



優斗くんの真っ白で大きな手が私の胸元に触れる。そのまま慣れた手つきでぎゅっと結び目が襟元まで上げられる。


鏡の中の自分を凝視する。


予想通り。
やっぱり似合っていない。
七五三のお祝いで、やけに親父くさいスーツを着させられた男児みたいだ。
おまけにネクタイの形もおかしい。
後ろの方が前よりも長くなってしまっている。
これ、どうするの?と優斗くんに聞くと、ベストかブレザーを着れば見えないから大丈夫、と言い放った。
嘘でしょ?そんなつけ方で良いの?と言いたいが、私にはこれをどうにかする手段がない。

3→←箱庭の中で 1



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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです!なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています! (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れお | 作者ホームページ:https://peing.net/ja/reosndy  
作成日時:2021年6月26日 21時

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