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こんなところまで冴えていない。
すぐ後ろに立つ龍斗くんとの対比に目がちかちかする。



龍斗くんが何でも着こなしてしまう規格外の美男子であることは理解しているけれど、こんな風にまざまざと違いを見せつけられると、流石の私も落ち込んでしまう。
雑草や道端の石ころのように生きてきた私にだって、多少はマシに見られたいというプライドがあるのだ。



はあ、と溜息を一つつくと、優斗くんが顔を覗き込んできた。




「折角の高校生に上がるのに、なんでそんなしょぼくれてんだよ」



「だって、だってさあ、その、なんか変じゃない?」



「何が」



「制服。私がネクタイしてるのって、おかしくない?」




ちらりと龍斗くんの方を盗み見る。


眠たそうな目でこちらを見ているが、ああ、やっぱりどことなく都会的だ。高校生って感じがする。
野暮ったさは一切ない。


対する私はちんちくりんで、どこからどう見ても背伸びした中学生だ。
せめて、手足がもう少し長かったら、あるいは二重幅がもう少し大きかったら違ったかもしれないのに。



「Aだって、似合ってるよ」



優斗くんは、私が龍斗くんと比べて落ち込んでいるのだと理解したかのようにフォローの言葉を入れてきた。
やけに優しい。
いつものぐしゃぐしゃの笑顔でも、からかうようないたずらっぽい笑みでも、憐れむような表情でもない。


何とも形容しがたい微笑。
例えるなら、この前読んだ近代文学に出てきた、ろくでもない夫をいつまでも待つ従順な嫁だろうか。
全てを受け入れ、全てを許す。
三つ指ついてご挨拶、着物の帯を締めて味噌汁を作る、大正の女性だ。




またもや、切断。


優斗くんと私の間に横たわる、大きな亀裂。
離れていく。
けれども、いつもの居心地の悪さとは違う。



今までは、ノイズの混じったラジオの音に襲われ、重たい頭を抱えながらずっと立たされているような気分だった。
けれども今は、喉に引っかかった魚の骨が取れないような、さっきまで覚えてたタスクをど忘れしてしまったような、そういうもどかしさだった。



私は優斗くんのこの表情から何かを読み取れる気がする。
でも出来ない。
上手くアクセスできない。




どうしたら良いか分からなかった。
だから鏡の中の自分を睨んでいたら、後ろに立った龍斗くんが「歪んでる」と一言呟いてから出て行った。
恥ずかしくなって、私は優斗くんに結んでもらったネクタイを解いてしまった。

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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです!なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています! (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れお | 作者ホームページ:https://peing.net/ja/reosndy  
作成日時:2021年6月26日 21時

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