海と川 ページ5
「けほっ、くっ…」
照りつける日光が頭の天辺をじんわり焼いて、ぐちゃぐちゃの脳が溶けて外に出そうだ。
そんなグロテスクで非常なことが起きるはずもないけれど。
それでも、そう錯覚してしまう程、傷んだ躰を焼く日差しはキツイものだった。
軋む関節は歩くのを止めろと脳に訴え、体中に広がる擦り傷、刺傷は乾いてそこから体全部が崩れていきそう。
先刻から頭の中心部を殴りつけるような頭痛もする。
衝撃で破れたかも分からない肺で呼吸するのが辛くて、息をするのを諦めてしまいそうだ。
軋んだ足を止めると、すぐ側に川が流れているのを見つけた。
涼しそうな水音に惹かれて、また足を進める。
「う、ここで、少し休憩に…」
素足を流水のなかにいれて、そのまましゃがみ込んだ。傷だらけの肌を流水が掠めていく。
「！…っな」
暫く水に浸っていると、自分の目の前を川の流れにのって流れていく大きな何かがあった。
それは自分よりも高さがあり、人にも見える。
というか人だ。
「あれ、人…？まさか、何でこんなに浅い川で、溺れる筈もないのに……」
それでもその砂色の外套を纏った何かはどんどん川の向こうへ流されていく。
見ていられなくなった私は、助けることにした。
善い行いをすれば、神の慈悲を受けることもできるのではないか、と考えながら。
土手に近い浅瀬から少し足を進めて、流れの中止の方に立って拳も流水に沈めた。
冷たい水の感覚を確かめながら、苦しい呼吸を落ち着かせる。
「＿＿＿【小波の声を】」
少し張った声で唱えるように言うと、規則正しく川下へ向けて進んでいた流水が、まるで自らの意思を持ったように動き出した。
噴水のように空中へ立ち上り、人が流れていった方へ向かう。
追いつくと、川の流れを変えて、こちらへ人を流し戻してきた。
私の足元まで戻ってきたそれを引っ掴んで陸へあげる。転がったそれは案外意識がはっきりしていて、面倒そうに声をあげた。
「最近の若者は、無闇に人を助けるのかい？
先日の虎少年といい、君といい。」
「溺れていたのではないのですか？私は貴方を助けようと…」
「その必要は無かったんだよ。まあ、君は美人だ、私と心中でも？」
「お断り致します。」
何なんだこの男は。随分と変わった人だ。大丈夫なら私は帰ろう。
「あ、君。ちょっと待ってくれ給え。」
「まだ何か？」
「否、私は特に用は無いのだけれど、君、そんな格好で歩いていると通報されてしまうよ？」
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はづ星咲(プロフ) - よっしー3号さん» はじめまして、コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しい限りです。 太宰さんの一人称の件、大変失礼致しました！先程修正して参りました。こちらが人物の一人称や人物同士の呼び方などを把握できておらず…。これからもご指摘頂けますと幸いです。 (2017年5月28日 10時) (
レス) id: 57d4552860 (このIDを非表示/違反報告)
よっしー3号(プロフ) - とっても面白い話ですね！ ……一寸云いにくいのですが、太宰さんの一人称は『僕』じゃなくて『私』ですよ？ ……ってあぁぁ、上から目線過ぎましたすみませんっ！ これからも更新頑張って下さい！ (2017年5月27日 22時) (レス) id: 669979a4ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はづ星咲 | 作成日時：2017年5月26日 19時
