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.her side ページ14

レインside


『レインさん眠くないですか〜?
寝てても大丈夫ですよ』

「ううん、大丈夫」

『そうですか。じゃあお喋りします?
私、今日は雑談配信したいんですよね〜

だから、とにかく喋る練習したくて』



直前にやることでもないですけどね、と
運転席で彼女は笑う。

謙遜しつつも、Aさんの話は澱みない。
聞きやすく上品な彼女の声が私は好きだ。


助手席で揺られながら、
Aさんの横顔を眺めるのは初めてで、
少し胸が躍った。



──Aさんは不思議な人で、
いつもお菓子のような香りをまとっているが

その奥で僅かに鉄のような匂いがする。


さらに言うと、それは血の匂いに似ている。


きっと私と近い職業に就いているのだと思うが、
彼女はそれを詳しく明かしてくれない。


そういった謎めいた面もありつつ、
いつも笑みを絶やさず、優しく接してくれるところに
私は少しずつ惹かれているのかもしれない。

助手席に座ると、Aさんの匂いがより強く感じられた。



「……画面の向こうの皆と会話する配信だと、その
いろんなコツが必要だと思うんだ」

『確かに。そうですね』


Aさんは緩やかにハンドルを切った。

そして、ふと思い出したかのように
昨日の初配信のことを口にする。


『でも本当に、
昨日はリスナーの方々と顔を合わせることができて、嬉しかったなぁ。

やっぱり画面の向こうで知らない誰かが声を聞いてくれるっていうのは、
感動しますね。

ファンの方々の存在はありがたいです』



うんうん、そう! と

笑いかけようとしたところで、
ぷつ、と心に棘が刺さったような痛みを覚えた。

何だろう。

ファンを大切にしたい気持ちや、
これからの配信を良いものにしたい気持ちは同じだ。

同じはずなのに、
ただ、彼女の横顔が私の方を向いていないのが
少し寂しかった。



「…………Aさん」


『ん?』
と、小首を傾げた彼女に、言葉を投げつける。


「あの、私もAさんのファンだからな!」


そう声を張ると、
数秒だけAさんは私を真っ直ぐ見つめた。

そしてすぐに目を細めて、口を開く。


『あははは、ありがと〜
私もレインさんのファンですよ』


彼女はどこまでも穏やかにそう告げて、
正面を向く。

私の言いたいことは伝わらなかったようだが、

Aさんは微笑んでいる。

のほほんと微笑む彼女を見ると、
毒気や強張りが抜けていく気がした。

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ロア(プロフ) - 初コメ失礼します。バルチェさんの底知れなさがとても好きです。更新を楽しみに待っています。最近暑いのでご自愛ください。 (7月23日 19時) (レス) id: 16ef5a014f (このIDを非表示/違反報告)
みゃー - 設定から何まですごく好きです!更新を楽しみに待っています。 (2022年2月13日 1時) (レス) id: 8ae8149b6f (このIDを非表示/違反報告)
エルち(プロフ) - 面白いです~!更新楽しみにしています (2022年1月31日 23時) (レス) @page22 id: 309f663f88 (このIDを非表示/違反報告)
popop(プロフ) - なだめさん» なだめさんありがとうございます。ゆっくりにはなりますが、更新がんばりますのでよろしくお願いします。 (2021年11月14日 1時) (レス) id: 0c64a999d8 (このIDを非表示/違反報告)
popop(プロフ) - ねむねむねーむさん» ねむねむねーむさん、ありがとうございます。更新滞っていてすみません……なかなか予定通りの進度で進まず苦戦していますが、今後ともよろしくお願います…… (2021年11月14日 1時) (レス) id: 0c64a999d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:popop | 作成日時:2021年9月24日 3時

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