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「ん、何だ。」
優しく上杉君が聞いてくれる。この作戦に上杉君をのせるのは何だか申し訳なかったけど、翼が考えてくれたし、根回しもしてくれたそうだからきちんとやらないと。
「あの、私、好きな人ができたの!!」
恥ずかしくて俯いたんだけど、上杉君に反応がないから恐る恐る顔を上げたんだ。
すると、上杉君は今までに見たことないほど真剣で、暗い顔をしていた。その目には複雑な感情が入り混じっている。
やがて、意を決したようにこっちを見た。
「誰だ、誰なんだ!?」
怒りが現れていた。本当は上杉君なんだよ。上杉君が一番大好きで、かけがえのない存在なんだよ。
そう思いながらも翼に言われたことを実践する。
「えっと、いつもは冷静でクールで理性的なんだけど、今は少し感情的で怒ってるかな。とてもかっこよくて冷たく見えるけど本当は優しくて。そんな人なんだ。」
地味に告白寸前のことをしてるんだけど、混乱していたからなのか、鈍いのかは分からないけど、とにかく気づいてなかった。残念。
「で、誰だよ。もしかして、kzの奴らか。」
確かここでは、うんって言えばいいんだよね。
「うん、そうだよ。kzの中に好きな人ができたんだ。」
私は目を伏せてそう告げる。もう、ほとんど告白しているというのに、上杉君は全く気づいてくれない。
しばらく無言のまま歩いていると、もう私の家の前だった。翼の言うことでも間違えることってあるんだ、と思いながら送ってくれてありがとう、と言おうとする。だけど、言えなかった。上杉君の声が重なって。
「誰だよ。」
「え。」
急な質問に面食らっていると、怒鳴り声のような声が響き渡った。
「誰なんだよっ!熱い若武か、スマートな黒木か優しい小塚か。それとも心友の美門か天然な七鬼か!誰なんだよっ。」
そんなに激しく感情を露わにしている上杉君を始めて見た。
なぜか、じわっと涙が浮かんできて、視界がボヤける。
上杉君はバツが悪そうな顔をして横を向いた。
「悪い。泣かせるつもりはなかった。」
私は精一杯首を振る。声を出してしまったら、本格的に泣いてしまいそうだった。
そんな顔を見られたくないと思い、上杉君に背を向け門へ向かって歩き出す。
「待てよ!!」
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作者名:たちばなあや | 作成日時:2018年4月23日 18時