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「後悔せえへん？」
彼は二度、わたしに訊いた。
一度目は再会した直後に、そして二度目は、わたしの顔に目隠しをつける直前に。
「これ以上の猶予はないで？」
「・・・うん」
街のなかで、視界が閉ざされる。
目玉の上を長いスカーフが覆い、耳と肌の感覚が研ぎ澄まされていくことがわかる。
すこし不安になったが、右手を包んだ彼の手の温度にひどくおだやかな気持ちになった。
やっと、やっと逢えたのだ。
わたしはもう、この手を離したくない。
いや______________この手から、逃れたくない。
引っ越しをしたのだと、彼は言った。
今度は日の当たる場所だからあんしんしていい、と。
わたしは彼のはなしをききながら、浮かび上がるいくつかの疑問を無理やり吞みくだす。
あなたが何者なのか。
どうしてわたしの誕生日を知っていたのか。
そんなものは、愚問に思えてならなかったのだ。
不思議なひと。
「ここやで」
歩みを止めたのと同時に、目元を隠していたスカーフが外された。
光のまぶしさに目を痛くしながら見上げた建物は、黒字に白の文字で『club Ton』と刻まれている。
Ton
それがドイツ語で『音』という意味だと、わたしは五年前に引いた辞書を思い出す。
日の当たる場所。
地上一階のそこは、しかしあの時に感じたひそやかな空気はそのままに。
「おいで」
硝子戸をくぐり、なかに入る。
更に、分厚い二重の扉を抜けて。
「・・・あ」
あの日とおなじ、ラグジュアリーな香りに煙草のにおい、バーカウンターにミラーボール。
楽器の並んだステージ、そして奇妙だったのは、がらんとして広いフロアの中心に・・・濡れたような黒い革張りのソファがひとつ置かれていること。
そこに、ふたりの美しい男が腰を沈めていたことだった。
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べに(プロフ) - ココナッツさん» うわあああああココナッツさん！ありがとうございますわたしも好きです(T T) (2018年3月14日 18時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - うわああああべにさんっ！うわああああ…(ワケわからなくてごめんなさい、汗)…好きですっ！ (2018年3月14日 15時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年3月13日 0時
