Phase07 ページ9
喧嘩するほど仲が良い、などと言うが正に中也と太宰がそれを表しているのでは無いのだろうか。欠伸が出る程に穏やかな晴天。その下で伸び伸びと優雅に歩けるのは幸せだ。
「何だっけ? ああそう、今向かってる場所だったね。
これから向かうのは調査だよ。爆発を一番間近で目撃した人間に聞き込みに行く」
中也は顔を顰め、面倒臭いというオーラを放つ。一方、零魔は自身の周りを彷徨う一匹の蝶を掴んで、そのまま握りつぶす。文也にそれを見せればドン引きしている。この行動がおかしいと思わない彼女は何故なのか理解できていない様子だ。
「だが……《荒覇吐》の噂なら、《羊》の仲間がさんざん調べてるぜ」
「《羊》の噂好き。でも、聞けない相手、いる」
太宰は彼女の発言に賛成の言葉を吐く。少年は正面を向き、再び歩きながら云った。
「一週間前、僕達が経験したのと同じ爆発が起きていた。
場所も同じ、擂鉢街でだ。
先代そのものの姿は目撃されてなかったから気づくのが遅れたけど、おそらく僕達が追ってる事件と同じものが原因だろう。その爆発の生存者に話を訊きに行く」
生存者、という言葉にいち早く反応した中也は死人が出たのかを聞けば、憚ることなく歌うように自然な様子で太宰は答える。
「ああ。マフィアの一団だ。生き残った人は異能者でね、そこの二人は会っていないけど、君は既に会っている人物だよ。
この先に自宅があって、そこで話を聞く約束を──」
太宰が路地の先を指差した時──呼応するように、その方角から轟音が鳴り響いた。気の抜けた声をこぼした零魔とは対照的に、中也は大きな声で驚愕の声を放つ。
「……あー」
太宰が面倒そうな顔をした。文也もことが上手く運ばれないことに気づき、太宰と同じく呆れたような、面倒そうな顔を作る。
「今のは爆発音じゃな」
零魔は中也の背中から顔をひょこり、と出して遠くを見詰めれば、そこには爆発のあった屋敷らしい場所から、黒い煙が上がっていた。銃声も微かに届いてくる。
「あれ、話聞ける?」
「犯人に先を越されたかなあ。このままじゃ聞けないかも」
焦りの欠けた二人の声。それはこの状況に何も抱いていないのと同じだ。何か考えがあるのか、それともただ単に諦めているのかは本人にしか分からない。
「空と、違う」
ただ一つ、誰にも向けていない言葉を紡いだ零魔はピアノを演奏するかのように指を中空で滑らせた。
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作者名:フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ:無し
作成日時:2022年7月15日 20時