Phase05 ページ7
中原兄妹のコントを眺めていると彼女の肩をトントン、と誰かが叩いた。横に顔を動かせば左目に包帯を巻き、左腕は
「……？」
「あの女の子、あいつの妹か何か？」
少し目を煌めかせている太宰とは正反対に無を孕んでいる零魔。太宰は彼女に何か
「……姪、同じ」
「へえ、あのチビに可愛い妹がいるなんて」
チビ、と言う単語が聞こえたのか中也は「チビじゃねえ！」と叫ぶ。そこで漸く零魔は自身の腕に手錠が掛かられていることに気づいた。
「掛けられてる」
「お主、少し鈍感ではないか？」
相棒の鈍感さに呆れている文也を無視して、彼女は指をパチン、と高らかに鳴らした。すると手錠が外れる。太宰は僕と一緒で器用なのだね、と誉めているのかよく分からない言葉を放つ。
「……中也、馬鹿」
「あぁん？」
なんの前触れも無く飛んできた罵倒に中也は顔を顰めながら零魔の方に視線を移す。文也は初めて零魔が罵倒の言葉を口にしたことに驚きながらも面白いのか笑っている。
「この、男。危険」
「ひどいなあ。僕はただの自 殺願望者だよ？」
太宰の言葉を無視して零魔は文也の足枷を外そうとするが、やはりか細い手ではビクともしない。銃で撃っても無傷なその枷は、皮肉ではあるが文也に少し似合っていた。
諦めた零魔は薄汚れた壁に凭れて寝ようとする。中也から寝るな、と注意されるがどうせ彼が運んでくれるだろうと思いそのまま意識を暗闇へと落とそうとする。
────が、太宰がそれを止めた。
寝てもらっては困る、と言いたげな表情をする少年に零魔は心の中で困惑の言葉を紡ぐ。とは言っても、その困惑は偽りであるが。
「森さんの命令だ」
思考を先読みされて赤目の少女は不機嫌な顔をする。だが、それはあまりにも軽微すぎるため誰も気づかない。
中也が足枷を重力で破壊する。その圧倒的な力は何度も目にしている零魔でも強い、と思わざるおえない。兄は妹の腕を掴み、外へ出る。
それに続くが如く、太宰と零魔も狭い密室から出ようとすれば、不意に零魔が問いかけた。
「知ってる？」
「……さあね」
太宰は不自然さを態と醸し出して、あの忌々しいチビの背中を追いかけた。
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作者名：フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ：無し
作成日時：2022年7月15日 20時
