はなしはじめ ページ34
切原君は私に声をかけるや否や、隣にも座らず立ちっぱなしのままだ。
彼は余り真面目な表情をする事はない。だから、只事では無いと直感し私も立ち上がり彼の前に立つ。
「なにかあった?」
切原君自体もどう話を切り出したらいいか悩んでいるのか、強ばった表情で無理に言葉を出そうとしている様子が伺えた。
切原「俺こういう状況なったことねぇし、言葉選び下手だからよ。こう、上手くは言えねぇけど…
お前、辛い事は辛いってちゃんと小日向と辻本に話してるのか?」
強い風が砂浜を巻き上げる。
切原君の言葉からどれくらい経っただろう、いや、多分そんなに経っていないのかもしれない。きっと私は驚いた表情をしながら切原君を見てる。
つぐちゃんや彩夏にもなるべく気付かれないように立ち回っていたつもりだったから、ここ最近出会った彼に私の気持ちを悟られると思っていなかった。
ここで誤魔化すのも何だか面倒臭い女だし、かと言ってほぼ初対面の彼に言うのも何だか重苦しい。
どう返事していいか分からず戸惑っている私の表情はきっと、かなり強ばっている。
「あの、ごめん。ビックリして言葉出ないんだけど、何かそういう風に思わせる言動した?」
赤也「俺が隣で寝た時、お前寝言でごめんって謝ってててよ、その時の顔すげぇ辛そうで、小日向に…えっと…
」
「つぐちゃんは何か勘づいてて、それを切原君に伝えて、今に至るってことでいい?」
切原君はそれだ!って顔をしてブンブンと首を縦に振る。
「切原君に負けたの悔しい」
赤也「何と戦ってたんだよ!!」
切原君の鋭いツッコミで少し笑ってしまう。
何となく1人で考えていた時よりも頭と心は軽かった。
「私、夏休み明けに転校するんだよね」
赤也「おう」
「今まで転校多かったから慣れてるんだけどさ、」
赤也「おう」
「慣れてるはずなんだけど、今の学校凄い居心地良くて、自分が思ってる以上に存在大きくて」
赤也「…おう」
「つぐちゃんや彩夏と離れるのちょっと惜しくて、笑 後…何より、約束してた事何一つ守れないで勝手にどっか行くの悔しくて」
赤也「その約束ってバスケ部とのやつだよな?」
「つぐちゃんそこまで知ってたの」
赤也「合ってるかは分かんねぇけど、約束あって、大会が…って言ってたな小日向は」
「そういう所が離れ難くするんだよね〜」
私はその時笑ってた…けど、間違いなく強ばっていたと思う。
切原君は察して下を向いていた
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作者名:あぽろろろろろ | 作成日時:2020年12月2日 3時