取引とライチ ページ14
私は今猛烈に吃り狂っている。
それは人見知り以前の問題で、離れロッジの前は威圧が桁違いだからだ。
消灯時間前にこの要件を終わらせないと私はスッキリ眠りにつけない。
いや知らねえよって話だけどさ。
意を決してドアを3回ノックする。
平古場「何の用さー」
木手「なるべく標準語で話しなさい平古場君。」
「簡単な奴はニュアンスで分かるんで大丈夫です。用件はこれです」
私は生活用品の入った箱を平古場さんに手渡す。
平古場「これ、色んな調味料があるさ！これで同じ味には……ってどういうつもりさー」
甲斐「物で吊るなんて趣味悪いだな」
「あ、違います、ご飯くらい美味しく食べた方が良いです」
生き残る。っていう目的があるからやっているだけであって、好かれたいからやっている訳ではないと説明する。
「私はクロネコヤマト便です」
自分でもよく分からん暴論を振りかざす。
案の定比嘉中の人達は、は？って顔をしている。
木手「あなた。跡部君のコマですか」
笑ってはいるが警戒心は剥き出しのままという事が嫌ほど伝わった。
「跡部さんとそんな話しません。たまたま居合わせた部外者を跡部さんもコマには選びませんよ」
平古場「じゃあ、何の為さ」
「これからはスケジュールを立てるし役割担当も決まります。だから、食料や調味料が比嘉中の皆さんからしたら調達しにくくなる訳です。必要なものを取りに行く度に衝突してたら効率悪いですよね？」
木手「取引ということですか」
「私が比嘉中をサポートします。その代わりミーティングに出る。これが取引です」
木手「いいでしょう」
平古場「永四郎？いいのか？」
木手「えぇ。見たところ彼女の独断行動です。それに、ミーティングでこの島に何があるか知れれば自分達で島を調べる手間が省けます」
「成立ですね、じゃあついでにこれもどうぞ」
甲斐「なんさ？これ」
「ライチの塩漬けです」
ただでさえ皆とバチってるんですから体力つけないとですよとかなり笑顔で煽る。
昼見つけた人がもぎってきたライチを少し貰って塩漬けにしたのだ。熱中症対策にいいだろう。
無論。怒られる前にライチ瓶を平古場さんに押し付けて全速前進逃亡。
この戦法はある意味無敵だと私はよく知っている。
小さい頃母によくやったからだ。
残ったライチ瓶を保存場所に置き、部屋に戻る。
昼間甘えられなかった分、今彩夏とつぐちゃんに甘えておかなきゃ
スッキリ眠りにつく為にもね。
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作者名：あぽろろろろろ | 作成日時：2020年12月2日 3時
