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「やっと見つけたわ…」
息を切らして現れたその影に、私は背を丸めた。
振り返ることなんて、出来ない。
ぐすっ……
しまった…
つい鼻を啜ってしまったことに気づいた時には既に遅かった。
「何で泣いてるのか、言ってみ?」
『………やだ。』
「はぁ…ヤダヤダ病、治らんねえ。」
呆れたように笑う宇髄は、目の前で女子が泣いているというのに、冷静過ぎてつらい。
ほら早く、と肩を掴まれ、目の前は宇髄が2人……ってそうか、涙で目の前が滲んでいるのか。
『嫌。言いたくない。』
「ヤダヤダ言われんのも可愛くて好きだけどさー、
……あ、いや今は俺のことはどーでも良いや。」
『本当軽いね。』
これには自分も驚いた。
どの口が言ってんの、って。
「そう?俺は言う相手選んでるけどね。」
お前の方こそ、って言われなくて安心した。
それ言われたら、返す言葉はない。
『じゃあ、あの子にも言ってるんだ?』
時間稼ぎのような会話に我慢出来なくなり、私は宇髄を見た。
真っ直ぐ私をみる瞳に、悲しげな自分が映る。
暫く間を置いた宇髄が、ゆっくりと首を傾けた。
「あの子……え、誰?」
『赤のピンヒールの、綺麗なオネエサン。』
しらばっくれてるのか、本当に心当たりがなかったのか、あー!と声を上げた宇髄が、ケラケラと笑った。
「もしかして今日、見てたの?」
『…私には見向きもしなかった。』
「ごめんごめん、マジで気づかなかったわ。」
『別にいいよ。あの子しか見えてないみたいだったし。』
嫌な言い方しか出来ない自分がどうしようもなく惨めだ。
「それ、妬いてるってことで良い?」
『妬いてない。
…けど、なんか嫌だった。』
まだ会社の近くだというのに、宇髄は私を抱きしめた。
「Aそれ、ずるくない…?
俺、都合良く解釈しちゃうけど。」
『宇髄にとって都合の良い解釈って、なに?』
ん〜、と少し照れ笑いを浮かべた宇髄は、勘違いだったらめっちゃ恥ずかしいな、と私を抱く腕の力を少しだけ強めた。
「この勝負、もしかして俺勝てちゃうんじゃないかなって。」
顔は見えないけど、嬉しそうなその声から、なんとなく表情は想像できた。
『さぁね…』
私はその背中に腕を回した。
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羽糸(プロフ) - cocoaさん» コメントありがとうございます!!私も書いていて楽しすぎました(笑)天元ならではのラブゲームだったかな、と思ってます!また読みに来てくださいね🍰🍰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» ありがとう!!こんな彼がいたら実際ゲームどころではないよね…ひよちゃんをドキドキさせられて嬉しい!私は満足です!!!実弥さんの方はじっくり書いてますが、なかなかムズカシイ!ひよちゃんの新作も楽しみにしております🥰🥰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - 読んでいて、楽しすぎました‼︎こんなラブゲーム、天元とならしてみたい笑 今後も楽しみにしてます(^^) (2021年11月4日 15時) (レス) @page23 id: e19d285429 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!! てんてんの包容力と器の大きさに溶かされました。いくつかのセリフも刺さった……終始ドキドキさせてもらったラブゲーム、ご馳走でした!! 実弥さんの方も、マイペースで頑張って下さい!! (2021年11月4日 10時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - すみっことかげさん» コメントありがとうございます!余裕たっぷりの天元、最高ですよね!こんないい男いたら即惚れますわ…(笑) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月28日 20時