A piece of cake!!【宇髄天元】

Was it easy as pie or nah? ページ20

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「…とりあえず、場所変えね？」



今日冷えるし、と付け加えた宇髄は私に手を差し出した。


夕方の光景が脳裏をよぎってなかなかその手を握れないのは……つまるところ、そういうことなのだ。



「ちゃんと説明はするって。」



強引に私の手を取った宇髄に手を引かれるまま、駅前のバーへと入って、宇髄と同じ、洒落た名前のカクテルを頼んだ。



「意外と強いから気をつけろよ？」


『んー。』


空返事で答えれば、別に連れて帰るから良いけど、なんて笑っている。


『行かないよ。あの子の影がある部屋なんて。』



こうなったらとことん拗ねるしかない。



「あーそうそれ。マジで勘違い。」



つまみで頼んだオリーブの塩漬けを口に放った宇髄が、そのままカクテルグラスを空にする。



「あれ、親戚の子。受付でバイトしてんのよ。」


『へぇ…でも兄妹じゃないならまあ、うん。』


「親戚って時点で俺は無理だし、向こう学生だぞ？
　派手に法に触れるから。」


『えっ、学生？！あんな大人っぽいのに？！』



思わず大きな声を出してしまい、宇髄のデコピンを食らう。


「まあ、宇髄の血を引いてるからな。アイツも。」


確かに、背も高いし、美人だった…
宇髄家の遺伝子、恐るべし。


「アイツの友達が俺の連絡先知りたいってしつこくてさ、本命いるし無理ってついAの話出したもんだから、探すとか言い出して大変だったってワケ。」




いやいやいや、本命の話で何故私の名前が…？



思考が追いつかない。

とりあえず大きな声は出さない。…デコピン痛いし。


おかわりのカクテルをがぶがぶ飲んでる時点で、冷静になんてなれるわけがなかった。



『とりあえず分かった。勘違いね、うん。
　
　ところでなんだけど、勝負、まだ決まってなくない？』



「そう？
　まあまだあと1週間ちょいあるし、別に今決めなくても良いと思うけど。」






この期に及んで余裕を崩さない宇髄は本当に凄いと思う。




でも、この勝負、案外楽勝だったみたいだよ。







『宇髄、いつから私に落ちたの？』




「ん？入社式の日。」




『はぁ？！？！』




「バカ、本当にうるさい。
　…というわけで、強制送還決定。
　はい、鞄持って店出て。」





無理矢理鞄を押し付けられて、出口に向かってぐいぐいと背中を押される。










あれ…なんか、足元が……歪んでる……？







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